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P&Gパンテーン「就職活動の在り方を問う」広告は、なぜ内定後の話ばかりなのか

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PANTENE公式サイトより

PANTENE公式サイトより

 ヘアケアブランドのパンテーン(P&G)の広告が、日本の就職活動の在り方に切り込んでいる。

 25日から日本経済新聞や渋谷駅、東京メトロ線内にて展開しているパンテーンの広告は、リクルートスーツに黒髪、ポニーテールという典型的な女子就活生の後ろ姿に、「自由な髪型で内定式に出席したら、内定取り消しになりますか?」と、コピーが添えられている。この広告に込められた意図は、新卒一括採用の就活を経験したことのある人ならすぐに分かるだろう。

 広告は全面がモザイクアートになっていて、よく目を凝らして見ると、「女性はほぼひっつめ髪なので、合同説明会などの大きい会場では自分を含め、同じような人ばかりに見え少し怖かった」「堅い。もっと個性があっていいと思う。みんなコピーみたい」「嫌だけど、周りがみんなそうだから、一人だけ違うことをするのは結果に影響が出そう」「個性がないのにどうアピールしろって? っていっつも思ってた」―――などの文章が並んでおり、就活生の本音が吐き出されている。筆者も4年前に就職活動を経験した身からすると、共感できる意見ばかりだった。

 パンテーンが実地した「1,000人の就職活動の“ホンネ”調査」の結果では、「企業にあわせて自分を偽ったことがある」と回答した就職活動生は81%、「就職活動時の身だしなみ(服装や髪)への不満があった」と回答した就職活動生は73%にものぼっている。今回の広告は、その就活生たちの本音を代弁したものとして、ネットでは共感や絶賛の声が相次いでいる。

 パンテーンは、今回の広告制作によせて<実際の就職活動生の声に耳を傾け、伝えていくことで、まずはより多くの人が今よりも自由にありのままの姿で自信を持って活躍していくことを後押しできたら、という思いから発足しました>と、コメントを発表している。

 しかし個人的には、このパンテーンの広告には物申したい思いがある。パンテーンは、「自由な髪型で内定式に出席したら、内定取り消しになりますか?」のほかに、全9パターンの広告メッセージを用意しているが、「内定式には黒髪に染め直して出席するべきでしょうか?」「内定式には自由な髪型で、と書いてありますが、どれくらい自由ですか?」―――すべて、状況が「内定式」に限られているのだ。 これから2018年卒の内定式シーズンを迎えるというタイミング的な要因が強いのかも知れないけれど、これが就活の在り方を問うメッセージだというのなら、なぜ「自由な髪型で面接に出席したら、採用されませんか?」と、言い切ってくれなかったのだろうとモヤモヤしてしまう。就活に挫折して、内定式までたどり着けない就活生だっている(そもそも、内定式のない会社なんてたくさんある)。

 広告メッセージを「内定式」に限定しているのは、結局その前提にある面接や採用試験においては、リクルートスーツに黒髪、ポニーテールという不文律は変わりません、ということなのだろうか。そう勘ぐり出すと、パンテーンのメッセージは途端にうすら寒いものになり、就活生が抱えた根本的な疑問の答えにはならない。そもそも、パンテーンの面接に、ド派手な髪型で行ったらどうなるのだろう?

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