P&Gパンテーン「就職活動の在り方を問う」広告は、なぜ内定後の話ばかりなのか

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 ここからは筆者の個人的な就活体験記になるので、暇な方だけお付き合い願いたい。

 毎年、就活が解禁する時期になると、街中や電車内で就活生を見かける。みんな黒のリクルートスーツを着込んで、髪色は黒、女性はきっちりとしたポニーテールで統一しているからすぐに分かる。昔の自分を見ているみたいで懐かしさを感じると同時に、あーあ、全然変わってないんだなと落胆している。

 自分の就職活動を振り返ってみれば、あの場所には、暗黙のルールがいくつも存在していた。私たちはいっせいに就活に身を投じなければならなかったが、まずはじめに教え込まれるのが身だしなみだった。就活用のハウツー本や情報サイトでは、就活マナーとして当たり前のように紹介されていたし、大学からは身だしなみについての講座を受けるように指導される(女子はとくに、メイク講座もあった)。すべての合理性は説明されず、私たちがこれから足を踏み入れようとする社会が、それを強く求める理由も判然としなかった。違和感はありながらも髪を染め直して、新品のリクルートスーツを着て合同説明会に出かけると、同じように居心地の悪そうな顔をした就活生が大勢いた。

 その頃、世間では、少しずつだけど就活の在り方が問われはじめていた頃だった。画一的な身だしなみが批判されていることも知っていたけれど、とはいえ就活はどんどん忙しくなっていく。毎日、ひと目で就活生と分かるテンプレートに自分をはめ込む日々が続いていた。リクルートスーツ姿で電車に乗って面接に急いでいるとき、「評価されるべきは外見じゃなくて中身だよ」「没個性は良くない」と、誰かのもっともな意見が聞こえてくるようだった。街ですれ違う人に、「あれが、かわいそうな就活生か」と思われてはいないかとも気にかけた。「無批判にスーツを着て就活をしている、お前こそ同罪だ」と、どこかで責められるのではないかと怖かった。このリクルートスーツ姿に、いちばん違和感を覚えているのは自分自身だ。でも将来のために内定は欲しいし、面接で失敗して泣きながら家に帰りたくない。社会に対して、あまりに無力だった。

 このいびつな就活ルールは、企業の採用にとって本質的に必要なものではなく、ただ放置されたままの慣習ということは、みんながうすうす気づいている。就活をめぐる状況が改善することが望まれているからこそ、パンテーンの広告に反響が集まるのだろう。でもそれは逆に、筆者が就活をしていた4年前から事態が変わっていないことの証左にもなっていた。

(今いくわ)

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