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今年6月に「働き方改革関連法案」が成立した。主な内容としては、「残業時間の罰則付き上限規制」「同一労働同一賃金の適用」「年次有給休暇5日の取得義務化」などで、来年4月1日から施行される。
すべてのビジネスパーソンがワーク・ライフ・バランスを獲得するため、過労死をなくすため、多様な働き方を実現するために推し進められてきた働き方改革が、法的な拘束力を持つようになったのは良いことだと考えられる。一方で、法案が可決されたことに不満を感じている経営者は多く、むしろ現場の労働者にとってはサービス残業や持ち帰り残業などが発生する懸念も出ている。
エン・ジャパン株式会社は21日、経営者や人事担当者648人を対象に実施した「働き方改革法案」についての調査結果を報告した。「働き方改革法案が施行されることで、経営に支障が出るか」との問いに、「大きな支障が出る」(9%)、「やや支障が出る」(38%)と約半数が「支障が出る」と回答。「経営に支障が出そうな法案はどれか」という設問では、最多が「残業時間の罰則付き上限規制」(69%)で、「年次有給休暇5日の取得義務化」(56%)、「同一労働同一賃金の適用(46%)と続いた。主に労働時間の取り締まり強化への懸念が強くあると言えそうだ。
働き方が変わった人も5人に1人
2016年8月に「働き方改革担当大臣」という新しいポストが設置されるなど、本格的に働き方改革が議論されるようになって2年が経った。だが、エン・ジャパン株式会社が6768人のビジネスパーソンを対象に今年の2月に実施した調査によると、「在籍企業が働き方改革に取り組んでいるか」という設問に、「取り組んでいる」という回答は43%と半分未満。企業の働き方改革への腰の重さが伺える。
さらに、「取り組んでいる」と回答した人に、「会社の働き方改革に対する取り組みで、あなたの働き方は変わったか?」を聞くと、「変わらない」が51%と約半分。「変わった」と答えた人は22%で、5人に1人しか変化を実感できていない結果となった。
そして、働き方が変わらない理由について、最多は「制度や仕組みが、現場の実態に合っていないため」(48%)だった。以降、第2位「担当している仕事の量が多いため」(39%)、第3位「できた制度や仕組みを実際に使う機会がないため」(31%)と上層部の現場状況の無理解が大きいようだ。このままでは法案が施行されても、ただ「法案を遵守していますよ」というだけの対応になり、現場にしわ寄せが及ぶ事態も予想される。
そもそもの問題点は、残業時間の削減や有給休暇所得の義務化で、支障が出てしまう経営をしていることにある。これを機にこれまでの働かせ方を改め、どうすれば経営に支障を出さずに法令を遵守できるのかを真剣に検討すべきだろう。お仕着せの働かせ改革では意味がない。