ガソリン価格高の裏にトランプ戦略 原油高騰が日本の社会保障制度を揺るがす未来

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緩やかな石油ショック

 そうなると、2014年以降、4年で原油価格が3倍以上に上昇することになり、かつての「石油ショック」ほどではないにせよ、マイルドな石油ショックの形となります。これは日本などの石油を輸入して消費する国の購買力が奪われ、産油国に所得が集まることになります。産油国がその所得を世界に還元してくれればよいのですが、石油危機当時を思い起こすまでもなく、石油輸入国では景気停滞(スタグネーション)と物価上昇(インフレーション)が同時に生じるスタグフレーションが発生しやすくなります。

 政策当局には厄介なパターンで、インフレを抑えるべきか、景気拡大を図るべきか、ジレンマに陥ります。石油ショックの時も日本やドイツではインフレ抑制を重視し、短期的には結果として景気の悪化がひどくなり、フランスやイタリアでは景気重視策をとってインフレが進みました。

 今の日本は主要先進国でもインフレの心配はないのですが、いずれも賃金の伸びが低く、原油高で少しでもインフレ率が高まると、景気の負担が大きくなります。たとえば、今年の日本では春闘賃上げが2%台とされていますが、これには定期昇給が含まれていて、実際のベースアップは0.2%から0.5%程度と言われます。

 これは原油高で物価が0.6%押し上げられている現時点で、すでにベースアップ分はエネルギー高で打ち消されています。今後さらに原油高が進むと、実質的にはベースアップではなく、ベースダウンとなり、消費を圧迫します。そうなると来年秋に予定されている消費税引き上げが難しくなり、政府が再び先送りする可能性が出てきます。原油高は結果的に日本の財政をも圧迫し、社会保障制度を揺るがすことにもなります。

 原油価格高は無視できない状況になってきました。

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