女性から人気が高く、社会現象を引き起こすこともある日本テレビ「水曜22時枠」ドラマに、ガッキーこと新垣結衣がいよいよ降臨! 国民的女優と言っても過言ではない彼女が主演する『獣になれない私たち』。いったいどんな作品なのだろうか?
このドラマは、新垣主演の『逃げるは恥だが役に立つ』で脚光を浴び、今や押しも押されぬ大人気脚本家となった野木亜紀子が脚本を担当。頭でっかちなオトナに送る新感覚のラブストーリーだ。タイトルの『獣になれない私たち』には、本能のまま、野生の獣のように自由に生きられたら楽なのに、という意味が込められているという。笑えるコメディー要素はもちろん、切なくジリジリする恋愛模様も繰り広げられるそうで、視聴者を画面に釘付けにしそうだ。
“八方美人”であることに疲れた男と女の化学反応
新垣演じる主人公、深海晶(30)は常に笑顔で仕事も完璧。全方位に気を配り、誰からも愛される非の打ち所のない女性である。だがそれは彼女の身を削りながらの努力と我慢による賜物だったのだ。
対するもう一人の主人公、根元恒星(33)は「世渡り上手」「人当たりが良い」と評判の高い敏腕会計士。しかしそれは表の顔で、本当の彼は誰も信用できず無防備に人を愛さない毒舌男だった。裏表のある根元を演じるのは今ノリにノっている松田龍平。必死に「他人に見せる最高の自分」を演じる似たもの同士の2人が、クラフトビールバーで偶然出会ったことから物語は始まっていく-。
晶を演じるにあたり新垣は、「晶のように、嫌なのに勇気が出ないまま今と戦っている人は実は沢山いるのでは」とコメントし、カチカチになった心がふわっと軽くなるようなドラマにしたいと意欲を見せている。
昨年大ヒットし社会現象を起こした『逃げるは恥だが役に立つ』の「みくり」を超える人物を生み出せるか、期待に胸が膨らむ。そして主演の新垣と松田の魅力はもちろんのこと、脚本を担当する野木にも高い関心が向けられている。なぜなら彼女は原作モノが多発する昨今のドラマ界で、自身初のオリジナル作品『アンナチュラル』を大成功させたからだ。
『逃げ恥』で見せた脚本力は、またもガッキーの新境地を開拓するか?
野木の脚本力の凄さは、ストーリー展開はもちろん、登場するキャラクター一人一人の人物描写が丁寧で魅力的だということ。物語が主人公を軸に描かれていることに変わりはないが、脇を固めるキャラクターたちの人物像が丁寧に表現されているため、まるで実在する人間かのように身近に感じてしまう。
共感することで愛着を感じると、「推し」キャラクターとして人気が生じやすい。『アンナチュラル』でいえば、過去に傷を持つツンデレ解剖医の井浦新、『逃げるは恥だが役に立つ』ではみくりの叔母を演じた石田ゆり子の例が挙げられる。2人は元々活躍の幅が広い俳優だが、野木作品により新たな魅力を開花させ圧倒的な支持を得ることになった。
主演を務める新垣もまた、野木作品により今までの「可愛い優等生」役から脱皮した俳優の一人だ。野木と新垣の初タッグは2013年に放送されたドラマ『空飛ぶ広報室』に遡る。このドラマで新垣は、上昇志向の強い前のめりなTVディレクターを熱演し演技の幅を広げた。一歩間違えると嫌われそうな役柄を演じるのは非常に難しそうに感じたが、彼女は難役を清々しく好演。思わず応援したくなるほどひたむきに演じてみせた。「ガッキー」と呼ばれ愛される彼女が、強い女性を演じるようになったんだなぁと少し感動したことを覚えている。
その後の彼女の活躍はめざましく、コメディーや推理モノといった新しいジャンルに果敢に挑戦し飛躍を続けた。そして2017年、野木との再タッグによる『逃げるは恥だが役に立つ』が大ヒット。少し面倒臭くてこじらせているが、一生懸命な「みくり」を演じ高い評価を得た。この作品で新垣は振り幅が大きい俳優として進化したと言えるだろう。
一方、新垣と共にこのドラマの主演を務める松田は「冷静」「無表情」という静のイメージが強い俳優だが、内に秘めた感情を淡々と表現する演技が素晴らしい。『あまちゃん』でのクールだが実は熱い心を持つマネージャー、秘めた恋心を持て余す公務員を飄々と演じた『カルテット』など、どの役も自然体で作りこんでいない印象を受ける。もしかしたらこれは演技ではなく素なのでは?と錯覚に陥ってしまう時さえあった。今回は「他人を信用しない毒舌男」という、ともすれば嫌な男を演じるが、そこは野木作品、ただの嫌な男に留まらない魅力ある人物を描き出しているに違いない。新垣と同様、新たな魅力を引き出す起爆剤になるのではないだろうか。松田の新境地にも大いに期待したい。
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