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マカロニ&チーズ〜奴隷制が生んだソウルフードとは

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 先日、夫が「最近、マック&チーズ(*)食べてないよね?」と物欲しげに言ってきた。ソウルフードの最たるメニューのひとつ、マカロニ&チーズのことだ。我が家ではマカロニ&チーズは最も重要な料理であり、親戚の集まりには必ず作るし、夫と息子の大好物なので平時もこうしてリクエストが飛んでくる。

(*)「マカロニ&チーズ」を口語では「マック&チーズ」と言うことがある。カジュアルな文章では「M&C」と書くことも。日本式の「マカロニチーズ」は使われない

 自分で焼いたマカロニ&チーズ、我が家が暮らすニューヨークの黒人地区ハーレムのソウルフード・レストランで食べたマカロニ&チーズの写真をインスタグラムにアップすると、多くの人から「イイネ!」が付き、「おいしそう~!」というコメントもいただく。マカロニ&チーズは日本にも浸透しつつあるようだ。

 ところで近年、日本でも各地の郷土料理をソウルフードと呼んでいると聞いた。(←いまさらのウラシマで申し訳ない)。検索してみると「へぎそば(新潟県)」「551蓬莱の豚まん(大阪府)」「三輪そうめん(奈良県)」「横手やきそば(秋田県)」……などなどたくさん出てきた。いわゆるご当地グルメ、ただしB級メニューを指すようだ。さらに「おにぎりは日本のソウルフード」といった表記も見掛けた。なるほど。であれば、お好み焼き、たこ焼き、カレーライスなども私にとっては日本のソウルフードだ。

 一方、「ソウルフードという言葉を使うのは気が引ける」というコメントも見掛けた。アメリカの黒人奴隷制に由来する料理であることが理由だ。

「魂」の食べ物

 ソウルフードとは、アメリカ黒人の家庭料理を指す。奴隷としてアフリカからアメリカに連れて来られた黒人は、白人が食べずに捨ててしまう粗末な食材を与えられた。それをいかに美味しく調理するかに工夫が凝らされた。

 奴隷主は黒人を自分の屋敷の料理人としても使った。料理人は当時の南部白人の料理と黒人料理を組み合わせ、かつ時代とともにアメリカに登場した新しい食材や調理法も加えていった。奴隷主は黒人の料理人がつくる料理をこよなく愛したが、黒人は食べることを許されなかった。奴隷小屋では相変わらず貧しい食材による調理がなされ、しかも過酷な肉体労働に十分な量ではなく、絶えず空腹に苛まされた。

 奴隷制度は約250年間続き、その間に南部料理、黒人料理はどんどんと発達した。両者は時に渾然一体となり、区別がなくなることもあった。やがて奴隷制は終わり、多くの黒人が南部を出てシカゴやニューヨークといった都会に移動した。そこでも黒人は自分たちが生み出した料理を作り、家庭で食べ、レストランも開いた。これが現在、海外からの観光客にすら人気の、一般的に食べられているソウルフードだ。ちなみにソウル(魂)フードという言葉は比較的新しく、黒人音楽がソウルミュージックと呼ばれ始めた1960年代に生まれたとする説がある。

チキン&ワッフル

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 現在のソウルフードの最も代表的なメニューは「チキン&ワッフル」だろう。フライドチキンとワッフルを一皿に盛り合わせたものだ。ワッフルにはメープルシロップをかけるが、チキンにもかかってしまう。それをそのまま食べ、甘塩っぱさの絶妙のコンビネーションを楽しむ。KFC、Popeyesなどファストフードのフライドチキンも独自の美味しさを持つが、ソウルフード・レストランのチキンには異なる食感と味がある。一口かじると、「外はこんがり、中はジューシーとはまさにこれか!」と唸ってしまう。

 チキン&ワッフルはランチ、またはブランチ・メニューだ。正式なソウルフード・レストラン・メニューは、まず肉か魚のメインディッシュ(主菜)をひとつ選び、サイドディッシュ(副菜)を2種選ぶ。その3つが一皿に盛られて出てくる。最初に温かくホクホクのコーンブレッドがバターとともに出されるので、それを食べながら料理を待つことになる。

 メインディッシュはフライドチキン、オックステール・シチュー(ウシの尻尾のぶつ切りの煮込み)、ショートリブBBQ、ナマズのフライなど。サイドディッシュはマカロニ&チーズ、カラードグリーン(高菜に似た菜の煮浸し)、キャンディド・ヤム(ヤムイモの甘露煮)など。デザートはレッド・ヴェルヴェット・ケーキ、ピーチ・コブラーが有名。飲み物は甘いアイスティー、レモネードが定番。どれを組み合わせてもかなりのボリュームになり、至福の満腹感を味わえる。

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堂本かおる

ニューヨーク在住のフリーランスライター。米国およびNYのブラックカルチャー、マイノリティ文化、移民、教育、犯罪など社会事情専門。

サイト:http://www.nybct.com/

ブログ:ハーレム・ジャーナル

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