
写真:ロイター/アフロ
時代のニーズを巧みに捉えて成功を遂げた企業がある。ビジネスチャンスをつかんで急成長しているIT企業もある。新興IT企業だけでなく、業歴の長い企業においても、時代の変化に沿っていかに新事業を開拓していくかは重要である。変遷するニーズに対応して、いかに事業展開していけるかが企業の生き残りのカギとなるといっても過言ではない。
特徴的な例を挙げれば、任天堂はかつて花札のメーカーだった。花札だけを作り続けていても今日の姿があり得なかったことは言うまでもない。任天堂は特殊な事例ではない。鮮やかに変身を遂げようとしている企業、そして遂げた企業は多い。筆者が専門とする電機業界において、その実例をシリーズで紹介する。
第1回はカメラメーカーからバイオヘルスケア企業へと変身を遂げたコニカミノルタ。
合併そしてデジカメ事業からの撤退
コニカミノルタは言うまでもなく、コニカとミノルタが合併して現在の形になっている。合併は2003年で、当時は業界紙記者だった筆者も合併記者会見に出席した。そのときに「デジカメは市場が成熟しているから、そういう選択になるのだろうな」と思ったのを今でも記憶している。
コニカの前身は1873年創業の「小西屋六兵衛店」で、一方のミノルタの前身は1928年創業の「日独写真機商店」である。ともに写真機あるいはフィルム、レントゲンフィルムなどを手がけ、その後デジカメや複合機など事務機器に事業展開していった。なかでもデジカメは両社とも看板商品で、コニカやミノルタブランドのカメラを手にした人も少なくないだろう。
しかし経営統合後、2006年にコニカミノルタはデジカメおよびフィルム事業から撤退する。関連事業はこの時点で全体売り上げの2割を占めていたが、この事業を売却および撤退、従業員も1割を削減した。
その後はさらにHDD用ガラス基板事業などからも撤退、一方で医療機器や有機EL照明事業に参入するなど再編を繰り返しながら、2013年から今の経営形態となる。すなわち合併当初は持株会社の下にそれぞれの事業会社を置いていたが、10年かけて再編を行い、2013年に持株会社からホールディングスの名前を外し、現在の事業会社の形にようやく切り替わったのである。
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