内田洋行が大企業の「慣性の法則」を打ち破り成功させた、新たなビジネスモデル

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他部署との接触を一切禁じた「鎖国教育」

 会社の危機に直面した、まさに第2の創業とも言うべき時期においては、ベンチャーのような働きが求められる。中堅技術者よりも、若くて意欲に満ち溢れた新人のほうがふさわしいと考えたのである。

 新社長の全面的な支持を取り付け、4月に入社した新卒全員(35名)と2年目社員(13名)から構成される「次世代ソリューション開発センター」を発足させた。そして、ここが肝であるが、社内よりも社外に目を向けさせ、自社にない技術を習得してもらうため、メンバーには次のルールを徹底させる。

「他部署の社員との接触禁止。食事や会議も別。会話も交わしてはならない」

 せっかく新人たちだけの組織を作っても、既存の社員と接触すると、どうしてもそちらに引っ張られる。まして新人ともなれば影響を受けないはずはない。新人だけで組織を作っても、既存の社員と交流しては意味がない。だから、このルールを徹底させたのである。ただし、商品化するうえで必須となるため、社内のデザイナーとだけは協働を促している。

 その徹底ぶりから、この施策は社内で「鎖国教育」と呼ばれたという。「鎖国教育」に対する社内の反発は大きかった。新人だけで開発することへの反発というより、新人が自分の部署に配属されないことに対する不満である。まさに、ビジネスモデル転換の必要性を感じていない不満であった。その不満を封じたのは経営トップである。

 新人たちは、社内の他部署との接触を禁じられたことから、顧客企業や大学などに足を運び、新知識の習得や新規事業のシーズ探しに力を注いだのだ。もちろん、新人がすべてこの環境に適応できたわけでない。耐えきれなくなった新人を無理に引き留めることはせず、社内の他部署に異動させている。

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