樹木希林を晩年のみで語るなかれ!「人生を達観した大女優」ではなかった“名脇役”傑作選

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岡本喜八監督作で、新旧老け役女優が夢の共演を果たす
『大誘拐 ~RAINBOW KIDS~』

監督:岡本喜八 配給:東宝  1991(平成3)年1月15日公開

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東宝より発売の『大誘拐 ~RAINBOW KIDS~』DVD版ジャケット

 悠木千帆時代の樹木希林が『寺内貫太郎一家』(TBS系)で老女役を演じたのは32歳だった。この『大誘拐~』は、そんな彼女が、同じく30代から老女を演じていた日本映画史に残る元祖老け役女優・北林谷栄(当時79歳)との共演を果たしている作品だ。

 3人組の若者グループに誘拐された大富豪の老女(広大な山林を所有)が、被害者でありつつもその誘拐犯や、警察、家族、マスコミなどを手玉に取り、ある大きな目的を果たしていくという痛快コメディ作である。公開当時は大ヒットというわけではなかったが、劇場は爆笑の連続で、口コミ的に人気が広がっていった。

 この作品での樹木希林は【パターン3】系統の役で、北林谷栄や間抜けな犯人グループ(風間トオルほか)らと絡むシーンでは、コメディエンヌぶりがいかんなく発揮されている。

深田恭子のお婆ちゃん役ながら、説教臭さはゼロ
『下妻物語』

監督:中島哲也 配給:東宝  2004(平成16)年5月29日公開

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東宝より発売の『下妻物語』Blue-ray版ジャケット

 茨城県下妻市……つまりは農村を舞台にした、ロリータ・ファッションを愛する女子高校生(深田恭子)と、レディースの一員であるヤンキー少女(土屋アンナ)との不思議な友情ストーリー。

 すでに14年も前の作品だが、深田恭子の見た目が今とほとんど変わっていない点に注目。また、「イオン」が「ジャスコ」と呼ばれ、ケータイはあるがスマホがない、もちろんLINEもない、そんな近過去カルチャーを振り返ることができる点でも興味深い。

 樹木希林は、主人公(深田恭子)の理解者であるお婆ちゃんという、晩年のパブリックイメージに通じる立ち位置の役で出演している。しかしながら、キャラはあくまでも【パターン3】の系統。

 なぜならこの作品では、片方の目にアイパッチを装着した元不良という設定で、家の中でゴロゴロしているだけ。最後に孫娘になんらかの教訓を示すと思いきや、それがない。説教臭さゼロなのだ。

 俳優は死ぬと、どうしても晩年のイメージでのみ語られがちである。SNSの普及後は著名人の訃報が手軽なネタとして消費されていくため、特にその傾向が強くなっている。

 しかし、以上の通り1970年の『男はつらいよ フーテンの寅』から2004年の『下妻物語』までの作品を観ると、樹木希林という得がたいバイプレーヤーを晩年のパブリックイメージだけで語ることがいかにナンセンスなの か、ご理解いただけるのではないかと思う。

(文/ミゾロギ・ダイスケ)

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