いま、精神疾患や知的障害を抱えた人々を社会としてどのように受け入れていくのかという問題と、そういった人が被害者となった、あるいは加害者となってしまった重大犯罪についてどのように対応していくかという問題が注目を集めている。
2017年12月には、大阪府寝屋川市で統合失調症の女性(当時33歳)が、自宅敷地内のプレハブ小屋で10年以上監禁された末、体重は19キロにやせ細り衣類も身につけず凍死、両親が自首したことで発覚した。
時期を同じくして兵庫県三田市では、知的障害のある男性(当時42歳)が約25年にわたって自宅に隣接するプレハブ内に設置された木製のオリに監禁されていたことが発覚、2018年4月に父親が逮捕され、男性は同年1月に福祉施設に保護されていたことも判明した。
三田市の事件では、逮捕された父親などから市は何度も相談を受けていたことがわかり、6月19日に神戸地裁で開かれた第1回公判は即日結審、同月27日に言い渡された判決では懲役1年6カ月に3年の執行猶予が付いた。これに対し、審理が尽くされなかったのではないか、長期間にわたる虐待行為に対して甘い判決ではないか、などの批判も出たが、この父は9月放送のNHK『クローズアップ現代+』に出演、「ほかに方法はなかったのか、ずっと考えている」などとインタビューに答えている。
そこで本稿では、特に「統合失調症」に話題を絞り、それがどのような病気であり、またこうした「監禁事件」の背景にどのような問題があるのかについて、識者へのインタビューを通して解き明かしてみたいと思う。
話を聞くのは、精神科専門病院である昭和大学附属烏山病院の院長で、精神科医の岩波明氏。いったい、統合失調症とはどんな病気なのか。彼らを受け入れてきた精神科病院の実態とは? 前後編に分けてインタビュー記事を掲載する。