皆さんは「お子さんに追加の2本ワクチンを打ちましょう。合計で13500円かかります」という話と「その2本分が1本で済むワクチンを受けましょう。9500円です」という話では、どちらがいいと思いますか? もちろん、後者とお答えになるはずです。でも今、私のように毎日患者さんと接している臨床の医者は、前者を勧めるように言われているのです。なぜなのでしょうか?
不活化ポリオワクチンというポリオを予防するワクチンがあります。2012年に定期予防接種となる前は、生ワクチンで飲むタイプがポリオの定期予防接種として使われていました。ごく稀にではありますが、生ワクチンはポリオ発症のリスクがあるため、経済的に豊かな国は、日本が変更する10年以上前に不活化ポリオワクチンに切り替えていました。
日本でも不活化ポリオワクチンの需要が高まっていたのですが、厚生労働省はどういうわけか長期間に渡って生から不活化への切り替えをしなかったという経緯があります(ポリオの会HP)。市区町村が費用を負担して、希望者は輸入した不活化ポリオワクチンを受けられるという自治体が増えた後、厚労省も重い腰をやっと上げて国として定期予防接種には不活化ポリオワクチンを使うようになりました。
不活化ポリオワクチン定期予防接種化に際して、いつ何回打つかということはもちろん検討されました。諸外国を参考にし、日本で作られた不活化ワクチンで治験をし、効果と安全性を確認し現在のように4回接種になっています。しかし、世界の主流は今、5回、6回の接種です。
そのため、日本でも旅行などで海外から入ってくる麻疹や風疹のように、ポリオも再び感染者を増やすかもしれない、5回目のポリオワクチンを5-6歳で打ちましょうということが言われています。
また近年、百日咳の感染者が増えています。百日咳は4種混合ワクチン(ジフテリア、百日咳、破傷風、ポリオを一緒に予防できるワクチン)に入っていて、4回定期予防接種を受けます。しかし、不活化ワクチンの効果は年々下がってしまいます。そのため4種混合ワクチンも、4種混合ワクチンも5回目を5-6歳で受けましょう、臨床医もそう勧めてくださいと言われています。
先日、製薬会社の人から「百日咳ワクチンの5回目の接種には3種混合ワクチンでお願いします。厚労省もそう言っています。なぜなら 4種混合を5-6歳で治験をしていないからです」と言われました。これが冒頭に示したお話に関係します。5回目の接種の際に3種混合ワクチンを使うと、不活化ポリオワクチンは別に打たないといけません。先ほど説明した通り、不活性化ポリオワクチンも5回打つことが勧められています。それならば、5回目の接種の際に4種混合ワクチンを使うほうが効率的ではないでしょうか? そんな疑問を製薬会社の方にぶつけてみました。
1 2