キャッシュレス化後進国の日本で「現金がいい」発言は“老害”なのか?

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進まないキャッシュレス化のインフラ整備

 どの国でも、高齢者(や何割かの若者)が新しい技術や仕組みに対応できないことは同じだ。日本は高齢者が先進諸国に比べて多いのは事実だが、遅れの原因は高齢者だからではないのだ。むしろ政府としての対応や銀行間の協力関係などによるインフラ整備の問題がありそうだ。

1. 決済システムの導入コストと手数料への負担感

 まずカードリーダーや多機能レジなどの決済システムの導入コストと手数料への負担感がある。たとえば中国のキャッシュレス化が進んでいる理由のひとつは、店頭にQRコードを張るだけというコストの低さと設置の簡単な仕組みが主流となっていることにある。

 あるいはデンマークのように複数の銀行が協力してDankort(ダンコート)というデビットカードの統一規格を作る方法もある。また、韓国では一定の年商以上の店舗はクレジットカードの取り扱いが義務化されている。

 人は新しい仕組みやツールに乗り換えるときに抵抗感を持つ保守的な生き物だ。これを解消するには、即物的なメリットも必要だろう。中国でも、スマホで決済するとクーポンが付く。韓国では、年間のクレジットカード利用額の20%の所得控除や、クレジットカードの利用控えに付けられた番号が宝くじになっていて、毎月当選者が出るようになっている。

2. 電子マネーの種類が多すぎる

 顧客囲い込みのために、楽天Edy、iD、nanaco、WAON、QUICPay、au WALLET、Suica、PASMOなど乱立していて、使い分けが難しい。

3. サイバー犯罪が増える

 各人がセキュリティー・リテラシーを高めておく必要がある。

4. 失業者が増える

 キャッシュレス化で不要になる業務が多く発生する。これは一方で、新しい業務が発生することも意味している。しかし労働者は、簡単に異なる業務に移動できないという問題がある。たとえば自動トレードシステムが導入されてトレーダーが失業した際、そのトレーダーがシステムを開発するエンジニアに簡単になれるわけではない。

国の政策がうまくアピールされていない

 日本のキャッシュレスが遅れているもう1つの原因として、国の方針が見えにくいということもありそうだ。

 経済産業省が2017年5月8日付でまとめた『FinTech ビジョン(FinTech の課題と今後の方向性に関する検討会合 報告)』には、以下のようにキャッシュレス化の重要性が記されている。

“FinTechが付加価値を生み出すためには、出発点となるお金の利用履歴、すなわち決済の記録が電子的に残り、利用できるようになることが必要である。その際の鍵はキャッシュレス化の推進である”

 つまり、世界的なFinTechの進歩に遅れを取らないためのキモは、キャッシュレス化であると捉えているのだ。その上で、キャッシュレス化を促進するために解決すべき課題も記載されている。

 この翌月に閣議決定された『未来投資戦略2017』には、キャッシュレス化の目標が以下のように記されている。

“今後10年間(2027年6月まで)に、キャッシュレス決済比率を倍増し、4割程度とすることを目指す。”

 すなわち、国としてもキャッシュレス化の必要性は十分に理解しており、そのための施策も検討され、目標も明確になっているわけだ。ただし、このことが国民にうまくアピールできていないと思われる。

 出遅れた感のある日本のキャッシュレス化だが、必ず進むことは間違いないのだ。

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