政治・社会

従順なはずの女が男を殺すから「センセーショナル」に扱われる~女性犯罪者の報じられ方 田中ひかる×高橋ユキ

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 歴史社会学者・田中ひかるさんによる『「毒婦」 和歌山カレー事件20年目の真実』(ビジネス社)が今年7月に発売されたことを受け、9月7日、下北沢B&Bにて、刊行記念イベントが開かれた。

 1998年7月に発生した和歌山カレー事件を追った田中さんと、2009年に発覚した首都圏連続不審死事件を取材したフリーライター・高橋ユキが、それぞれ、林真須美(正しい表記は眞須美)と木嶋佳苗というふたりの“毒婦”を語りつくしたトークイベントから、「女の事件の語られ方」という興味深いテーマを抽出。元祖毒婦から平成の毒婦まで、彼女たちはなぜセンセーショナルに扱われたのかを考察する。

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高橋 世間を騒がせたオンナ犯罪者には、『タリウム少女』とか『赤いフェアレディの女』とか『つなぎ融資の女王』とか、あだ名が絶対ついちゃうんですよね。しかもこのあだ名は、女であることを強調するんですよ。少女、女、女王とか、あとセレブ妻とかも。
一方、男性であだ名が付けられた人っているのかなって考えたら『ルパシカの男』大久保清くらいしか私は思いつかなかった(笑)。ルパシカを着てナンパして女を殺害してた男で、ロシアの民族衣装を着てたっていう。それぐらいしか思いつかないし、『ルパシカの男』だって別に浸透していない。『毒婦』は何かっていうとみんな付けるから、東の毒婦、西の毒婦、京都の毒婦、っていう感じになってるんですよね(笑)。

従順なはずの女が男を殺すから「センセーショナル」に扱われる~女性犯罪者の報じられ方 田中ひかる×高橋ユキの画像2

女性犯罪者のあだ名

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女・妻・母・婦

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確かに無名

田中 鳥取連続不審死事件の上田美由紀は、木嶋佳苗と同時期だったから「西の毒婦」と呼ばれてましたけど。

高橋 横綱みたいな感じですね。

田中 不審死している人数でいうと確か6人か7人でしたよね。事件としては首都圏連続不審死事件と同じくらい深刻ですよね。

高橋 でも生き様は全然違っていて。

田中 生き様(笑)。

高橋 佳苗はあくまでも自分をセレブに見立てる性格、生き様でしたが、上田美由紀は100円ショップで2万円分の商品を買ったりとかそういうタイプ。家もちょっと雑然として、世間は彼女にそそられなかったのかなーと思いました。

田中 筧千佐子も木嶋佳苗も料理で自分をアピールしてますよね。印象的だったのは、筧千佐子が男をひっかけるコツとして、「料理が得意」ではなく「料理が好き」と伝えるほうがいいと。「得意」と「好き」は違うみたいで。

高橋 いいのいいの好きだから~♥ みたいな感じなんですね。あと、報じられ方はやたらと容姿に注目が集まっちゃう、女の人は。真須美も最初確か、ミキハウスのTシャツを着てホースで水を撒いてる、あの映像が……。

田中 衝撃的でしたね、あのシーンは。林家はマスコミに家を取り囲まれて、子ども部屋まで窓からカメラで写されて、郵便受けからとりもちをつけて郵便物も盗まれて、中開けて、また戻すとか、色んなことをされていたんです。それで健治が頭にきて。でも健治は足が悪いので、真須美に「あいつらに水かけたれーっ」って命令したんです。そこを撮られたんですけど、あまりにもその……絵になり過ぎてて、カメラマンたちもカメラが濡れるのもいとわずに、撮ってましたね。

高橋 ちょっと笑ってましたからね真須美がね、それがまたなんか。

田中 というか、真須美はいつも笑っているんですよ(笑)。普通の笑顔なのに、毒々しいふてぶてしい笑い、っていうふうに取られてしまう。

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高橋ユキ

傍聴人・フリーライター。2005年に傍聴仲間と「霞っ子クラブ」を結成(現在は解散)。著作に「木嶋佳苗 危険な愛の奥義」(高橋ユキ/徳間書店)など。好きな食べ物は氷。

twitter:@tk84yuki

田中ひかる

1970年東京生まれ。著書に『月経と犯罪 女性犯罪論の真偽を問う』(批評社)、『「オバサン」はなぜ嫌われるか』(集英社新書)、『生理用品の社会史 タブーから一大ビジネスへ』(ミネルヴァ書房)、『「毒婦」 和歌山カレー事件20年目の真実』(ビジネス社)など。

田中ひかるのウェブサイト

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