サッカー東京オリンピック世代のエース・小川航基へのエール

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大ケガの後、待ち受けているのは現実を受け入れることができない日々

 今年9月、FIFAワールドカップ ロシア大会を終え、新たな日本代表に20歳の堂安律という選手が選出された。現在オランダにプレーの場を移しているが、海外挑戦へのきっかけはU-20ワールドカップでの活躍だった。

 そんな堂安選手の姿、小川航基にはどんなふうに映っているだろうか。もしあの時ケガをしていなければ自分が日の丸を胸に背負い、世界が注目する選手になっていたのかもしれない。

 決して彼が口にした言葉ではない。だが復帰するまでに彼が幾度となく、浮かんではかき消してきた未来予想図であることは容易に想像できる。現実はボールを蹴ることもできず、同じリハビリを繰り返す日々の中、同世代の選手が活躍するのを眺めていることしかできない。

 手術後に復帰や将来のビジョンの再構築以前に、最初に必要なのは現実と向き合える精神を作り出し、現状を受け入れる心の在り方だ。

長期間ピッチという職場から離脱を余儀なくされる焦燥感

 社会で働く人間は大ケガをして自宅療養や病院生活を送っていても、手や口が使えて働ける状態であれば仕事はできる。会社は仕事ができると判断すれば社員に働いてもらうことは当然のことであり、それが契約でもある。

 プロサッカー選手は個人事業主としてクラブと単年(または複数年)契約を結びプレーする。ピッチという職場で成果を出せば契約更新時に年棒がアップする。逆もまた然りだ。シーズンも終盤に差しかかるとクラブは来シーズンに向けてチーム編成を考える。

 選手への査定基準はクラブによってさまざま。試合に出場し結果を残しているか、他の選手と比較して良い数字を出しているか、今後の期待値(将来性)が高いなどあらゆる項目をチェックする。

 ケガをして試合に出場できない選手はマイナス査定の対象となるケースが多い。体調管理に問題があるのか、癖になってしまっているのかなど、クラブは負債になるかどうかを細かく精査する。その中でも大ケガをした選手はクラブにとって、長期間ピッチという職場から離脱する存在であるのは事実だ。

 選手は早くプレーしたいという焦り、完治せずにプレーすることで再発するのではないかという恐怖心。以前のようなプレーができなければ契約が解除されてしまうのではないかというプレッシャーに襲われる。1日では変わることのないケガと向き合いながら、迫りくる不安と戦う日々は想像を絶するものであり心を崩壊させていく。

 周りの声は優しさで溢れているものの、ピッチで戦う選手への声援を聞けば、自分の存在は忘れられた過去の人のように感じてしまうものだ。短くても半年。長ければ1年という期間、ピッチという職場で働くことができない焦燥感やもどかしさを感じない選手はいないだろう。

 東京オリンピック世代のエースと呼ばれ、世界へと活躍の場を移すだけの実力がある男であれば、なおのことその想いが強くないわけがない。

苦境を乗り越えるために必要な、一流選手の自分との向き合い方

 彼は今シーズン、4月に実践復帰を果たすものの7月のトレーニング中に右肩関節脱臼し、練習に合流できるまで6週間程度と診断された。ケガが新たなケガを呼ぶ。これもまたサッカー選手の宿命と言っても過言ではない。選手寿命が短いサッカー選手にとって完全に完治するまで待つ余裕などないのだ。

 プレーしながら治していくことはよくある話だが、心の片隅でケガした箇所を意識すればその分だけ他の箇所に負荷がかかってしまう。彼もまたその一人だったかもしれない。二度あることは三度あると言われるケガとのつき合い方、それは誰にとっても起こり得る挫折との向き合い方でもある。

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