ゲームに没頭するゲーマーが必ずしも「ゲーム障害」ではない 世界保健機構(WHO)による疾病認定の是非

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正式に認定するにはまだ早いのでは? との声も

 ただ、WHOの決定は時期尚早だとする意見も出ている。たとえば、BBCの『WHO gaming disorder listing a ‘moral panic’, say experts』と題された記事では以下のような指摘がされている。

 心理生物学のPeter Etchells博士は、今回の決定は、多くの無害な行動を病気扱いにする危険があると指摘している。

「我々は滑りやすい斜面に置かれたようなものだ。趣味を中毒と見なせば、次は何が来るか。日焼け中毒か、ダンス中毒、あるいは運動中毒に関する研究もあるが、誰もICDに含めようという議論をしていない」

 博士は今回の決定が、道徳的なパニックによって知らされるべきではないが、今まさにそのようなことが起きている気がする、と語っている。また、ゲーム中毒になっている人の割合は全体の0.5~50%近い幅があるという。つまりゲームを楽しんでいる人と中毒患者を正確に区別することは難しいのだ。

 そのため、過剰な診断をして問題のない人まで病気にされかねない。またCNNの『WHO classifies ‘gaming disorder’ as mental health condition』と題された記事でも、心理学者のAnthony Bean氏は、「これを診断と名付けるのは時期尚早だ」と語る。

 博士は、ゲーマーは不安や鬱症状を抑えるためにゲームをしているのであり、不安や鬱症状に対処することでゲームのプレー時間を減らせるとしている。そしてWHOのゲーム障害の認定範囲が広すぎ、臨床医の診断は主観的な経験に基づいていると指摘する。

「たぶん、ほとんどの臨床医はゲームのコンセプトを理解していないだろう。ゲームの世界に没頭した経験などないためだ」

 また、同記事にはWHOのVladimir Poznyak博士の見解も紹介している。博士は言う。

「世界中の何百万人のゲーマーがゲームに熱中していたとしても、彼らをゲーム障害に苦しむ人々と診断する可能性は極めて低い」

 それにもかかわらず、今回WHOが決定したことの意義は、ゲーム障害が存在することを警告して、苦しむ人たちが適切な支援を受けられるようにするためだとしている。

現実世界で悩みやストレスを抱えているから?

 日本国内では初めて専門外来を開いた独立行政法人国立病院機構久里浜医療センターのサイトには、オンラインゲームの弊害について以下のように紹介されている。

“深夜にゲームをすることで睡眠時間が短くなり、仕事や学業に影響が出てしまうこともよくあります”

“チームプレイを必要とするゲームでは、自分一人がゲームを抜けると、チームが負けたり、他の参加者に迷惑をかけたりすることになります。そのため責任感が生じ、学校があるから、眠いからといって自分だけゲームを止めることが難しいようです”

 そして少年少女たちにとって、オンラインゲームが魅力的なのは、現実を超えているからだと説明している。

“そのゲームの世界でヒーローになれます。現実ではできることが限られている少年、少女にとってこの魅力は大きいようです”

 ゲームに没頭する背景には、現実世界での問題があると指摘している。

“若い世代がオンラインゲームに没頭してしまう背景には、彼らが現実で直面する問題が関係していることもあります。例えば仕事や学校でうまくいかなかったり、家族や友人とうまくいかなかったりなどといった、現実世界での悩みやストレスがゲームに走らせていることもあります”

あなたは大丈夫? チェックしてみよう

 上記の久里浜医療センターの『ネット依存のスクリーニングテスト』では、米のKimberly Young博士が作成した「インターネット依存度テスト(Internet Addiction Test, IAT)」と、韓国政府が開発した「インターネット依存自己評価スケール(K-スケール)」で自己診断できるようになっており、判定結果と対策について紹介している。

 本記事を読んで気になった人はチェックしてみるといいだろう。もっとも、本当にゲーム依存症の人は、この記事を読まずにゲームをしていると思うが……。

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