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消費税がいよいよ10%に!? 軽減税率とポイント還元で救われるのは、国が理想とする弱者だけ

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生き延びるためのマネー/川部紀子

 ファイナンシャルプランナーで社会保険労務士の川部紀子です。来年の10月に、消費税が8%から10%に上がると言われています。消費税が初めて導入されたのは平成が始まった年でもある1989年。税率は3%でした。100円で買えた物が103円になり、買いづらくなったことを覚えています。

 その8年後の1997年には5%に、2014年には8%となりました。10%への増税は以前からも言及されていたものの、2度の延期がありました。しかし先日、安倍晋三首相が「予定通り増税を行う」と発言。10%に増税される可能性が高くなってきました。増税までいよいよ1年を切っています。というわけで今回は、庶民の暮らしと消費税について考えていただければと思います。

そもそもなぜ消費税?

 消費税が始まった約30年前から言われていたことは、迫り来る少子高齢化への懸念です。

 寿命が延び高齢者が増えてくると、当然医療費がかかります。実際にかかる医療費の7割から10割を国が公的な医療保険で負担するわけですから、当然、国の出費が増えていきます。

 公的医療保険の保険料も重要ですが、保険料を払う現役世代が減っていくこととなると、国の収入が減っていきます。

 医療だけでなく、介護費に関しても同じことが言えます。

 これでは当然、収支が悪化していくこととなります。この国に潤沢なお金があれば良いのですが、消費税が導入された頃には既に赤字だったのです。

 消費税が導入される前は、所得税の増税が国の収入を増やすという意味で行われていました。所得税は累進課税といって、所得に応じて税率が違う制度です。多く稼いでいる人達ほど税金がどんどん増えていくため、所得税の増税を続けると不公平感、不満が募ることが目に見えています。

 そこで、所得税でない方法で確実に税金の収入を増やす方法として消費税が出てくるわけです。買ったら税金!払ったら税金! お金を使わない人はいませんから、全国民から国に間違いなくお金が流れるわけです。

 他諸外国では既に導入されておりますし、歴史を紐解くと、日本で導入されるのは当然の流れで、あとは、どのタイミングで誰が総理大臣の時に?という問題だったと感じます。

 度重なる増税も然りです。何せ、収支の問題が依然解決していないのですから。これが、日本の状況なのです。

今回の増税の目玉は「軽減税率」「ポイント還元」

 今回の増税で初めて設けられるとされている制度が「軽減税率」と「ポイント還元」です。

 「軽減税率」は、一部のものは8%の消費税で据え置くという制度です。軽減税率の対象となるものは、まず「飲食料品」です。ただし、酒類、外食、ケータリングは10%となります。これらは必要でないと言いますか、贅沢と見なされたということでしょう。ちなみに、お菓子、宅配、テイクアウトは8%で認められたようです。また、新聞も8%で据え置かれることとなりました。

 どうして、こんなことが考えられたかというと、低所得者の負担を軽減するためです。先にも書いたように、お金を使わない人はいません。どんな人でも払う必要が出てくるのが消費税です。例えば、同じお米をお金持ちが買ったとしても、そうでない人が買ったとしても、消費税額は同じです。これでは、低所得者の所得に対する消費税の割合が大きくなってしまいます。

 そこで「生きる上で必要なもの」を買う場合には8%に据え置こうという、軽減税率の導入が浮上したわけです。

 「ポイント還元」とは、クレジットカード、電子マネー、QRコードなどを使って現金を使わずにキャッシュレスで買い物をした場合に2%をポイント還元する制度。ポイントはお金と同様に使えるため、実質8%据え置きと同じ効果があります。元々8%の軽減税率の対象のものを、現金以外で購入・支払いすると実質消費税が6%で済んでしまうので、増税前よりもお得となりそうです。

軽減税率とポイント還元のツッコミどころ

 軽減税率とポイント還元によって低所得者を救済しようという国の考え方は理解できます。

 軽減税率の対象になるもの、ならないもののわけ方も分からなくはないのですが現実とかけ離れている印象は否めません。

 国が描く救いたい「模範的な」低所得者というのは、酒類を飲まず、外食をせず家で食事をし、新聞を読んでいるような人達ということかもしれません。しかし筆者には、そんな低所得者がどうも頭に思い浮かばないのです。

 ファイナンシャルプランナーという職業柄もあってか、低所得者の行動特性のようなことを考えてしまいます。例えば、高くはないものの酒類を習慣的に飲んでいて、コンビニ内飲食や安い値段の外食が多く、新聞ではなくスマホでネットニュースを見ている人。お酒や外食、ケータリングは軽減税率の対象外ですから、その恩恵を授かることはできません。

 しかも、ポケットに小銭がジャラジャラ入っている男性やお財布が小銭でパンパンの女性も目に浮かびます。つまりキャッシュレス決済を使いこなしている人でもないので、ポイント還元も受けられないわけです。

 つまり、私の考えでは、軽減税率やポイント還元では救われない低所得者が多いのです。結局のところ一番生活が苦しくなるのは、国の想定から外れた低所得者になるということです。

 低所得者に限らず総合的に言えるのは、いずれにせよ増税となることを想定して賢く行動しなければいけない、ということです。誰でもできるキャッシュレス対策を講じることは基本中の基本とし、増税を口実にした余計な駆け込み購入をしないこと、そして情報を収集し行動に移すことが大切です。

 これから1年かけて、さまざまな議論で揺れると思われます。増税の決定や内容の最終決定を見守っていきましょう。

川部紀子

ファイナンシャルプランナー(CFP® 1級FP技能士)。社会保険労務士。1973年北海道生まれ。大手生命保険会社に8年間勤務し、営業の現場で約1000人の相談・ライフプランニングに携わる。その間、父ががんに罹り障害者の母を残し他界。自身もがんの疑いで入院する。母の介護認定を機に27歳にしてバリアフリーマンションを購入。生死とお金に翻弄される20代を過ごし、生きるためのお金と知識の必要性を痛感する。保険以外の知識も広めるべく30歳でFP事務所起業。後に社労士資格も取得し、現在「FP・社労士事務所川部商店」代表。お金に関するキャリアは20年超。個人レクチャー、講演の受講者は3万人を超えた。テレビ、ラジオ等のメディア出演も多数。新刊『まだ間に合う 老後資金4000万円をつくる!お金の貯め方・増やし方』(明日香出版社)が発売中。

twitter:@kawabenoriko

サイト:FP・社労士事務所 川部商店 川部紀子】

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