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V6三宅健から少年のような繊細さを引き出す。ジャニーズが全幅の信頼を寄せる女性演出家

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東京公演〜10/28まで、大阪公演11/8〜13 公式HP

 劇場へ足を運んだ観客と演じ手だけが共有することができる、その場限りのエンターテインメント、舞台。まったく同じものは二度とはないからこそ、時に舞台では、ドラマや映画などの映像では踏み込めない大胆できわどい表現が可能です。

 テレビを主戦場にする、俳優業のイメージがうすいアイドルやタレントが、意外な役柄で新鮮な顔を見せてくれるのも、舞台の大きな魅力のひとつです。その最たるのは、ジャニーズ事務所の所属タレントかもしれません。ジャニー社長という大プロデューサーが存在し、その後継を現役アイドルの滝沢秀明が表舞台から退いて務めるというニュースはいまだ記憶に新しいですが、個人的には、ジャニーズ事務所の「外」で奮闘している演技の方が、新しい姿を発見できるように感じます。

 現在上演中の舞台「二十日鼠と人間」も、そんな作品のひとつです。今年、滝沢とのユニットのヒットで年齢不詳なアイドル力をふりまいたV6の三宅健が、世界大恐慌時代のアメリカを舞台にした重厚な名作の主演に挑戦。いつの時代にも普遍的な、人間の孤独にもがく青年を熱演しています。

「二十日鼠と人間」は、アメリカ文学の巨匠でノーベル文学賞を受賞している作家のジョン・スタインベックの小説です。本人の手により戯曲化され、1937年にブロードウェイで初演。同年のニューヨーク批評家賞を受賞し、1939年、92年には映画化されています。

 世界大恐慌下の1930年代。農場の出稼ぎ労働者であるジョージとレニーは、幼いころからいつも一緒で、いつか自分たちの小さな土地を持つという夢を持っていました。大男のレニーは怪力の持ち主ながら、知能は小さな子ども並み。雇われ先の農場ですぐに問題を引き起こしては逃げ出すことになり、ジョージはいつもフォローに追われていました。

三宅健だからできた声の表現

 新しい職場の農場でも、管理人の息子カーリーに目を付けられて殴られ、美人だけれど常に男たちに媚びている彼の新妻にからまれながら、働く合間にふたりは夢を語り合います。雇われの身ではない、自分たちの小さな農場を所有するのに必要な額は、600ドル。その話を聞いていた同僚の、片手首のない老人キャンディが、持ち掛けてきます。

「自分には隠していた貯金の340ドルがあるから、夢の仲間に入れてほしい――」

 三宅はジョージ役を演じています。経済が暗い時代、将来への不安を抱えつつも酒や賭け事、女を買うことなど刹那的な楽しみしか見いだせない出稼ぎ労働者たちは、他者を気遣う気持ちを置き忘れて生きていく者が大半。トラブルの尻ぬぐいをせざるを得ないことをうっとおしく思いつつも、ジョージがレニーを切り捨てられないのは、子どものように盲目的な信頼を寄せてくる彼の存在が、殺伐とした生活の中のよりどころになっているから。

 レニーにとってもジョージは、生きていくためのフォローをしてくれる以上に、自分たちはほかの出稼ぎ労働者とは違うと、特別な夢を見させてくれる精神的な支柱そのものです。

 共依存ともいえるふたりの複雑な関係性を表していたのが、野宿の最中に持っていないケチャップをほしいとわがままをいうレニーに対して吐き捨てる三宅の「めんどくせー!」の一言のリアルさ。三宅は特徴的な声質の持ち主ですが、叫ぶと多少聞き取りづらいものの、激高してナイフを振り上げレニーをおびえさせてしまったときの後悔をにじませる声の表現の巧みさは驚きでした。

 キャンディがふたりの農場の夢にのっかったきっかけは、自身の飼っていた犬が老齢を理由に頭を銃で撃ち抜かれて安楽死させられたことでした。夢が現実味をおびて浮かれたレニーは、ジョージに口止めされているのに黒人労働者クルックスにペラペラしゃべり、カーリーの妻とのあいだでもめて、彼女を殺してしまいます。

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フィナンシェ西沢

新聞記者、雑誌編集者を経て、現在はお気楽な腰掛け派遣OL兼フリーライター。映画と舞台のパンフレット収集が唯一の趣味。

twitter:@westzawa1121

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