V6三宅健から少年のような繊細さを引き出す。ジャニーズが全幅の信頼を寄せる女性演出家

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 ジョージはレニーの行方を案じながら、同時に農場を持つ夢がついえたことを察し「たぶん初めから、無理だってわかっていた」と泣きます。緊迫の場面ですが、三宅のセリフは率直にいって棒読み、動き方も現代日本のヤンキーのようで、演技の技量は高くないことは明白でした。でも、うつろな目に涙をためて唇をかみしめる表情は、胸を突かれるものでした。レニーと落ち合ったジョージは、つらい決断を下します。キャンディの老犬と同じ、最も苦しみの少ない方法を用いて、彼を「解放」することを。

「二十日鼠と人間」の作者スタインベックは小説家であるため、同作は群像劇ではないにもかかわらずジョージとレニー以外の登場文物も皆、人物像が立体的に描かれています。レニーを見捨てて自分と夢をかなえないかとジョージにすがるキャンディを演じているのは、老舗劇団、青年座所属のベテラン山路和弘。黒人差別が合法の当時、農場で唯一の黒人でジョージたちよりさらに厳しい生活を強いられているクルックスはアングラ小劇場出身の池下重大と、海千山千のベテランに挟まれて、優ることはむずかしくとも存在を打ち消されはしていなかった三宅は、十分及第点といえると思います。

 劇中の人物たちは全員、孤独を抱えています。浅はかな言動から命を落とすカーリーの妻も、友だちを作る方法をそれしか知らず、話し相手すらいないさみしさにさいなまれたがための結果。カーリーの妻とキャンディの老犬には役名がないことも、障害を持つキャンディや黒人のクルックスとはまた別に、周囲から軽く見られていたことを示しています。

ジャニーズを成長させる演出家

 三宅の技量がほどほどなことは、作品のテーマである「人間の孤独」をストレートでシンプルに提示することにつながっていたように感じます。ジョージの心理は複雑なものですが、三宅から伝わってくるのは、誰かとつながっていたいという心細さと、慕われているという安心感。青年というよりも少年のような、繊細さでした。

 本上演は、人物描写の瑞々しさに定評がある鈴木裕美が演出をしています。小劇場作品から大規模なミュージカルまで幅広く活躍する鈴木は近年、関ジャニ∞・丸山隆平がシェイクスピア劇主演に挑戦した「マクベス」や、同じく関ジャニ∞・大倉忠義が男性同性愛者と性別を越えて結ばれる「蜘蛛女のキス」など、ジャニーズ事務所所属タレントが俳優として一皮むけるに値するチャレンジングな作品を手掛け、彼らの成長を後押しすることが目立っています。

 実は三宅は、鈴木とは2006年「第32進海丸」、08年「第17捕虜収容所」と3作目の共作。技術重視の一辺倒ではなく演者の個性を生かした起用と演出で優れた舞台をみせてくれることは、タレントファンにとっても演劇ファンにとっても、そしておそらく出演者自身にとっても幸せなこと。三宅はパンフレットで、こう語っていますーー「まだちゃんとしたストレートプレイを経験していない後輩には、絶対一度は裕美さんとやってほしいな」。

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