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近年、結婚式を挙げずに入籍だけする「ナシ婚」が増えている。これまで「入籍したら結婚式は挙げるもの」というのが一般的な価値観だったが、その意識は年々変化しているのだ。
株式会社パートナーエージェントは今月、20~39歳の男女1875人に対して実施した「結婚式」に関するアンケート調査の結果を発表した。「ナシ婚」が増えていることについてどう思うかを聞くと、「式も披露宴もした方がいいと思う」(11.0%)、「式だけでもした方がいいと思う」(11.1%)、「お披露目パーティーだけでもした方がいいと思う」(4.7%)と、26.8%が「何かしらの催しはした方が良い」と回答した。一方、33.0%は「式も披露宴もしなくていいと思う」と考えており、「ナシ婚」を容認する傾向が高まりつつある現状が伺える。
「ナシ婚」を希望する人は少なくなく、男性の21.2%、女性の22.2%が「自分自身は式も披露宴もしたいと思わない」と答えた。微差ではあるが男性よりも女性のほうがナシ婚を望んでいる結果は意外ではないだろうか。世間では、女性はウエディングドレスで祝福を受ける盛大なパーティーに憧れるものだとのイメージが根強いからだ。
また、「式や披露宴は正直なところ面倒に感じる」という設問では、男性の57.4%、女性の56.8%が「当てはまる」と回答。「式や披露宴であまり好ましくないと思うこと、必要ないと思うこと」については、「費用がかかり過ぎること」(70.8%)が最多。次いで「準備に時間や労力がかかること」(49.0%)と、お金や時間といったコストが多くかかってしまうことを懸念していることがわかる。男女ともに5人に1人が「ナシ婚が良い」と考えており、結婚式を挙げることは当たり前ではなくなってきているのかもしれない。
結婚式は経済的に余裕のある人だけが挙げればいい?
「ナシ婚」を望む人が少なくないのは、「若者の消費離れ」に原因がありそうだ。株式会社ジャパンネット銀行が2000年以降に成人・あるいは社会人になる世代「ミレニアル世代」に実施した「お金に関する意識・実態調査」では、「お金を貯めるのは喜びだ」(74%)、「たくさんお金を使うのが怖い」(68%)と、貯金への意識と高さと、消費への警戒心が見受けられた。
また、ニッセイ基礎研究所生活研究部で主任研究員をしている久我尚子氏は、30歳未満の単身勤労者世帯の消費性向を次のように分析している。
<今の若者は「お金を使わない」と言われるが、2009年頃までは特に男性ではバブル期と比べて「お金を使わない」わけではない。しかし、消費性向は低下傾向にあり、手元のお金が増えても消費を抑える傾向は強まっている>
パートナーエージェントの調査で式や披露宴を好まない理由に、7割が「費用がかかり過ぎること」と回答していたことから察するに、「興味がないから結婚式を挙げたくない」というよりは、「結婚式にお金を使いたくない」といった、経済的な理由が根底にあると推測することができる。
しかしリクルートブライダル総研が先日発表した調査では、挙式、披露宴・披露パーティ総額は357.5万円で、2012年調査(343.8万円)よりも13.7万円も増加した。ここからは、経済的に余裕のある層が結婚イベントを行っていると考えられる。
無い袖は触れない。限りある資金の中で優先順位をつけるのは当たり前のことだ。そこに着目し、安値で挙式を敢行できる「スマ婚」や、自己資金0円を謳う「今婚」などのサービスも登場している。門出の記念、決意の表明の儀式としての“結婚式”の形は、時代とともに多様化しているといえるだろう。