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インフルエンザ予防に「貼るだけのパッチ型ワクチン」と新治療薬の承認

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Thinkstock/Photo by gpointstudio

 「腕に貼るパッチ型ワクチン」が、インフルエンザの予防接種に一大レボリューションを巻き起こすかもしれない。そんな夢のような研究がある。

 米アレルギー感染症研究所(NIAID)のDarrick Carter氏らの研究グループは、注射針を使わず、腕に貼るだけで微小の針(マイクロニードル)から接種できるパッチ型のインフルエンザワクチンを開発し、その臨床試験の成果を『Science Advances』2018年9月12日号にて発表した。

 発表によれば、アメリカなどではインフルエンザワクチンは筋肉注射が一般的だが、パッチ型のワクチンであれば、筋肉注射は不要だという。なお、日本のインフルエンザワクチンは皮下注射である。

 研究グループは、ワクチン効果を強化するアジュバント(免疫増強剤)とともに、ワクチンをフェレットにパッチで投与する実験を行ったところ、1回のワクチン投与だけでフェレットのインフルエンザ感染を予防できたという。

 さらに、このパッチ型ワクチンの安全性を検証するために、およそ100人の健康な成人を対象に臨床試験を行なった。その結果、ワクチンを接種した人々は、接種しなかった人々よりもより強い免疫応答が得られ、しかも、ワクチンによる重大な副作用はなく、人間でも安全性が確認されている。

 Carter氏らは「このワクチンなら郵送できるので、自分で皮膚に貼ってインフルエンザ感染を予防できるだろう。ヒトを対象にした臨床試験がさらに進捗すれば、およそ5年以内にワクチンは承認される可能性がある」と期待を寄せている。

 米疾病対策センター(CDC)の推計によれば、米国で季節性インフルエンザの予防接種を毎年受けている人は、半数に満たない。自宅にいながら自分で接種できれば、接種率の向上にもつながるだろう。

国内ではインフルエンザ治療のイノベーションが進行中

 パッチ型のインフルエンザワクチンでの“予防”は、まさに夢のようなエポックだが、国内でもインフルエンザ“治療”のイノベーションは起きている。

 今年2月、厚労省は、実用化を早める「先駆け審査指定制度」を利用し、インフルエンザ治療薬バロキサビルマルボキシル(バロキサビル)の製造販売を世界に先駆けて承認し、3月半ばから発売を開始した。

 バロキサビルは、従来のノイラミニダーゼ阻害薬(タミフル等)とは作用機序(薬が効くメカニズム)が異なる「キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬」と呼ばれる新規のインフルエンザ治療薬だ。タミフルと同様の経口投与で、1回飲んだだけで治療が完了するという特徴があり、通常のインフルエンザA型、インフルエンザB型のほか、H5N1、H7N9などの鳥インフルエンザ、ノイラミニダーゼ阻害薬に耐性を持っているウイルスに対しても、効果が確認されているのだ。

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佐藤博

大阪生まれ・育ちのジャーナリスト、プランナー、コピーライター、ルポライター、コラムニスト、翻訳者。
同志社大学法学部法律学科卒業後、広告エージェンシー、広告企画プロダクションに勤務。1983年にダジュール・コーポレーションを設立。マーケティング・広告・出版・編集・広報に軸足をおき、起業家、経営者、各界の著名人、市井の市民をインタビューしながら、全国で取材活動中。医療従事者、セラピストなどの取材、エビデンスに基づいたデータ・学術論文の調査・研究・翻訳にも積極的に携わっている。

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