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14個の爆弾と、13人の殺害〜オバマとヒラリーへの爆弾/黒人射殺/ユダヤ寺院乱射

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ユダヤ差別主義者による銃乱射によって11名が殺害され、6名が負傷したシナゴーグ(左の白い建物)。その前に集まり、犠牲者を追悼する市民。撮影:浪花小町

オバマとヒラリーに爆弾

 アメリカ、なんという一週間であったことか。10月22日(月)から27日(土)にかけて、2件の人種民族憎悪に基づく乱射によって計13人が殺害され、CNN、バラク・オバマ前大統領、ヒラリー・クリントン元司法長官など、反トランプ派の政治家やメディアに宛てた計14個の爆弾が発見された。

 11月6日の中間選挙が近づき、共和党、民主党、ともにラストスパートをかけていた10月の後半。少なくとも下院だけは民主党が過半数を取れそうな気配となり、共和党はトランプ、民主党はオバマ前大統領がじきじきに全米各地をまわり、応援演説を続けていた。

 その最中、10月24日(水)の午前、CNNのニューヨーク支局で爆発物と思われる郵便物が発見された。支局はマンハッタン59丁目のコロンバス・サークルに建つタイムワーナー・ビルの上階にある。朝のニュース番組の途中で火災アラームが鳴らされ、番組は中断された。ただちに全員がビルから強制退去となり、ニュース・キャスターたちはビル周辺の路上から報道を再開した。同ビルの下階はアマゾン・ブックストア、コーチ、セフォラ、ホールフーズなど多数のテナントが入るショッピング・センターだが、こちらももちろん封鎖された。

 やがて同様の爆発物が前大統領バラク・オバマと前ファースト・レディ、ミシェル・オバマの自宅(ワシントンD.C.)、元国務長官ヒラリー・クリントンと元大統領ビル・クリントンの自宅(ニューヨーク州)にも送付されていたことが報じられ、状況は混沌を極めた。歴代合衆国大統領2人の殺害計画である。続いて民主党の強力な支持者であり、大口献金者である大富豪ジョージ・ソロスの自宅(ニューヨーク州)にも2日前に爆弾が送付されていたことが報じられた。

 さらにこの日、マキシン・ウォーターズ下院議員の事務所(ワシントンD.C.)と自宅(カリフォルニア州)にそれぞれ1通ずつ、オバマ政権時代の司法長官であり、オバマ氏の親しい友人でもあるエリック・ホールダー(フロリダ州)にも爆弾が送付されていることが分かった。CNNに送られた爆弾の宛名が、これもオバマ政権時代のCIA長官、ジョン・ブレナンであることも発表された。

 翌25日(木)になると、オバマ政権時の副大統領であり、やはりオバマ氏の親友でもあるジョー・バイデン(デラウェア州)宛に2通、俳優ロバート・デ・ニーロの事務所(ニューヨーク市)にも1通、爆弾を梱包した封筒が送付されたことが判明。

 26日(金)にはコーリー・ブッカー上院議員(ニュージャージー州の事務所宛だったが、フロリダ州の郵便物センターで発見)、オバマ政権時の国家情報長官ジェームズ・クラッパー(ニューヨーク市)、ヘッジファンド大富豪でトランプ弾劾運動を進めているトム・ステヤー(カリフォルニア州)、カマラ・ハリス上院議員(カリフォルニア州)宛の爆弾も発見された。ブッカーとハリスの両上院議員は2020年の大統領選への出馬が予想されている人物だ。

トランプが生んだ悪しき習慣

 発見された爆弾は計14個。送付された12人全員がトランプ批判で知られる民主党の政治家、民主党献金者、社会活動家、芸能人、またはトランプが罵倒を続けている相手だ。トランプは2016年の大統領選が終わって2年経ち、自身が大統領となった今も日々の発言や演説でバラク・オバマ、ヒラリー・クリントンへの攻撃を続けている。とくにヒラリーについては政治集会で集まった支持者に「彼女を刑務所に入れろ!(Lock her up!)」と気勢を上げさせている。この執念深さは常人の理解の域を超えている。

 カリフォルニア州選出のマキシン・ウォーターズ議員は、時には行き過ぎとも思える激しいトランプ批判で知られるが、トランプはそのウォーターズを「IQが低い」などと罵倒している。大統領から議員に対してのセリフとは到底思えず、小学生のケンカのレベルだ。ロバート・デ・ニーロは民間人であるだけに発言の自制をする必要はなく、機会あるごとに「ファック・トランプ!」「顔にパンチを喰らわせたい」などと声を上げている。

 話は逸れるが、トランプが招いた負の事象のひとつがこれだ。トランプの当選以前はたとえ政治的に立場が異なろうとも、政治家や著名人が少なくとも公の場で相手を罵倒することはなかった。しかし今は大統領自身が罵倒する。それに対抗してアンチ・トランプ派も同様の罵倒をおこなうようになった。この悪しき習慣はトランプがホワイトハウスを去ったのちも残りはしないかと憂えてしまう。

 ちなみにCNNに送られた爆弾の宛名はオバマ時代のCIA長官だったが、CNN自体もトランプから「フェイクニュース」の最たるメディアと名指され、犬猿の仲だ(*)。ホワイトハウスの定例記者会見でCNNのジャーナリストと報道官が口論になることも珍しくない。

※この記事を書き終わった後の10月29日(月)、アトランタにあるCNN本社にも爆弾が届けられたとの速報があった

 なお、元大統領、現役国会議員への郵便物はすべてシークレット・サービスによる検査が行われるため、どれも本人の手には渡っていない。大富豪や著名人といえども民間人であるソロス、ステヤー、デ・ニーロは自宅もしくは事務所で爆発物を受け取っているが、14個の爆弾すべてが不発であり、死傷者は出ていない。

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堂本かおる

ニューヨーク在住のフリーランスライター。米国およびNYのブラックカルチャー、マイノリティ文化、移民、教育、犯罪など社会事情専門。

サイト:http://www.nybct.com/

ブログ:ハーレム・ジャーナル

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