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『獣になれない私たち』には“いい人”が登場しない――モヤモヤ続く展開、起爆剤は松田龍平?

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 『獣になれない私たち』がちょっと残念な状況だ。開始前から期待度が高く、『けもなれ』と略称され話題に事欠かなかったこのドラマ。リアルさを追求した内容に反響は多いが、「見ていて辛い」「身につまされる」など、自身に投影してしまう視聴者が続出。ドラマ視聴をリタイアしてしまう人が目立つ事態となっている。

 「ラブかもしれないストーリー」と謳われてはいたが、ラブどころか社会の厳しさがメインとなっていた第一話。パワハラやセクハラの日常、弱っていくメンタル。京谷(田中圭)の存在があるにも関わらず「恋がしたい」「新しい恋ができたら何か変わるのかな」と爆弾発言をする晶(新垣結衣)。何かを諦めているような彼女の表情に、雲行きの怪しさを感じる。

 案の定、ドラマの佳境に謎の女・朱里(黒木華)が登場。どうやら京谷と同居しているようだ。登場シーンこそ数分だが、引きこもりを思わせるその風貌はインパクト大。いったい何者?と視聴者をモヤッとさせた。

救いのない展開は、リアルなのか夢ドラマなのか?

 第一話のラスト、現状の打開を試みた晶に「二話からは楽しく見られるかも」という希望を抱いたが、第二話でもワンマン社長の横暴ぶりは健在。そんなに人生都合よく進むものではないが、これでは救いがない。

 しかも最後の追いうちとばかりに、晶が「京谷と元カノとの同居」を容認しているという衝撃の事実が発覚!なんとそんな状態のまま4年も経過しているという。こんなとんでもない状況はあり得ない。普通だったら1カ月も我慢できないだろう。もはや我慢とかいう次元の問題ではなく、どM特性のある女性なのでは?と悪いコトを考えてしまった。京谷も京谷だが、晶も晶なんじゃないか。

 肝心の晶と恒星(松田龍平)の仲も、ビアバーで会う「気に入らない奴」止まり。序盤だからまだこんなもんだろうと思いきや、第二話ラスト付近になぜか2人で「恋に落ちる鐘の音」を聞きに出かけるという唐突さを見せた。今までの2人の関係性に「出かける」要素ってあった? と疑問に感じたが、多少の強引さはドラマに必須なのだろう。でも、いい年齢の大人がそんな少女マンガみたいな行動起こすもの? と違和感は生じた。リアルなのか夢ドラマなのか戸惑ってしまう。

唯一の自由人・菊地凛子は救いの神か?

 そして第三話。そろそろ明るい兆しが見えてくるはずだと期待して視聴したが、晶は「特別チーフクリエイター」に昇格した影響で、いっそう仕事が増加してしまうことに。再び仕事の割り振りを交渉するも社長は耳を貸さず、ストレスは増すばかり。リアルさを追求したいからなのか、電車に飛び込まないよう柱にしがみつく晶の描写があり、胸が締めつけられる思いだった。訴えたいことは理解できるのだが、見ていて気分は良くない。

 しかし、このドラマの中で唯一の自由人・呉羽(菊地凛子)が登場すると、やりきれなさから少し解放されるような気がする。恋人の恒星に何も言わず結婚してしまったり、既婚の身でありながら「する?」と誘惑したり。その傍若無人さは到底真似できるものではない。晶の対極として表現しているのだろうか。しかし、この呉羽の自由すぎる行動が波紋を呼び、晶と京谷の仲をかき乱していく。

共感はできる、が……

 三話までを振り返ると、晶がただ我慢し苦しむ物語に思われがちな『けもなれ』だが、要所要所に深い名言が飛びだしたり、「わかる!」と共感できる部分が多々ある。

 たとえば、ガッキーのダメな同僚の一言「どんなにしんどい毎日でも、好きな人がいるってだけでなんとかなる」。これには深く賛同せざるを得ない。とんでもない環境に身を置いていたとしても、仕事が意に沿わないものだとしても、好きな人のことを考えただけで力がみなぎり、実力以上の能力を発揮できる時がある。恋は生きる原動力になるのだ。

 他にも、「希望が欲しいんです。恋愛って贅沢品じゃないですか」「明日のメシがない時に恋ができますか?」「毎日の活力になる、そんな存在が欲しいんです!」など、胸に強く刺さる語録が満載。もう、共感の気持ちしか沸いてこない。

“いい人”が登場しないドラマで気持ち良く見る方法はあるか

 だが、日々忙しい毎日を送る人々が求めるものは「癒し」である。共感力はドラマにおいてとても重要かもしれないが、癒しの女神・ガッキーが疲弊して消耗する姿を延々と見せられるのは忍びない。ファンはガッキーの笑顔が見たいのだ。辛い姿を見たいわけではない。これではドラマを見た後、気分が落ち込んでしまう。

 ではどうすれば視聴者は、気持ち良くドラマを見ることができるだろうか? まず「救い」になる人物を登場させることだろう。晶を取り巻く環境は険しい。恋人は優柔不断で、同僚も後輩も自分勝手。社長は横暴。あげくの果て、唯一の血縁である母親はマルチ商法狂いでほぼ絶縁状態。不幸がてんこ盛りすぎて泣けてくる。いくらなんでも詰め込みすぎじゃないだろうか。今のところ良さそうな人物はビアバーのマスターぐらいしかいない。

 晶の今後の恋の相手になるだろう恒星も、まだドラマ序盤だからということもあるだろうが、魅力が不十分。過去に何かを抱えている毒舌な男ということしか見えず、萌える要素が見当たらないのだ。しかし、嫌な奴だと思っていた男が実は優しい性格だったとか、本当は情に厚い一途な内面を持っていたというギャップは、女性を大いに喜ばせる。前半は魅力を出し惜しみし、徐々に爆発させる戦略なのかもしれない。今後の恒星が、停滞気味の『けもなれ』を上昇させる起爆剤となる可能性はある。

 いろいろイチャモンをつけてしまって恐縮だが、私は野木作品のファンである。彼女のドラマに勇気や希望をもらった視聴者は数えきれないほど多いだろうし、私自身もドラマを見て「明日もがんばろう」と思ったクチである。そのため、現状がとても寂しい。『けもなれ』は初回視聴率こそ11.5%だったが、第二話は3%減少の8.5%。第三話は0.4%減少の8.1%となってしまった。

 前評判が高かった分、余計に残念な気持ちを抱いてしまうのだが、そこは野木マジック、奇跡の盛り返しを見せるかもしれない。大ヒット作『逃げ恥』は、序盤ほとんど期待されていなかったにも関わらずどんどん視聴率を上げた。野木の前作品『アンナチュラル』も多少の変動はあれど、最終話に13.3%と高い数字をたたき出した。結果が良ければ途中経過がイマイチでも、何とかなるものである。今後のどんでん返しを期待したい。

福井原さとみ

映画と深夜ドラマが大好きなライター兼丸の内線沿線OL。新宿二丁目から代官山まで幅広く出没する。最近悩んでいることは、巨大化しつつある実家の豆柴犬のメタボ対策。

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