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仏ファッションウィークで起こった地獄のような虐待、労働搾取

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Thinkstock/Photo by Goran Jakus Photography

 10月28日、仏の通信社AFPは「ファッションモデルの実態は借金奴隷? #MeToo後の最大のタブー」というセンセーショナルなタイトルで、ある告発記事を報じた。

 記事には、ハイファッション誌「VOGUE」や、高級ブランド「プラダ」「コム デ ギャルソン」のショーへの出演経験を持つファッションモデルが登場し、華やかに見えるモデル業界で体験した異常な「仕打ち」を告白している。

 ロンドンを拠点に活動しているクララさん(26/仮名)は、モデル業の対価として手にするのは〈小遣い程度〉と述べ、〈ニューヨークとパリのエージェンシー(代理店)に多額の借金をしている〉と語った。この「借金」とは、海外のショーに出演するための労働ビザ代のほか、エージェンシーとの不当ともいえる契約によって、膨れ上がったもののようだ。

 毎年2月下旬頃に開催されるパリのファッションウィークに参加したときのエピソードについて、クララさんは〈エージェンシーから車を1台与えられた。民泊仲介サービスのエアビーアンドビー(Airbnb)の大きなアパートの1室に他のモデルたちと一緒に詰め込まれ、みんなで車をシェアして会場と部屋とを行き来した〉と言い、〈その時の運転手に1日300ユーロ(約3万3000円)の支払い(の義務)が発生していたことを知ったのは、ずっと後になってからだった。そういう内容の契約書に事前にサインしてしまっていたため、イベント終了後には3000ユーロ(約33万円)の借金が残った〉と、告白している。

 さらに、ニューヨークでは3人の相部屋をあてがわれたと話し、〈エージェンシーに1晩50ドル(約5600円)を支払った。キャスティングと同時に体調をひどく崩してしまったため、本番にはほとんど出演できなかった。最後は8000ドル(約90万円)の赤字となった〉と訴えているのだ。

 こうした状況下では、どれだけ働いても赤字のように思えるのだが、クララさんは「借金」を返済するために、現在も同じエージェンシーと仕事を続けているという。しかし、〈彼らへの借金はいまだに残っている。例えば出演料1100ユーロ(約12万円)のパリの大きなショーに出ても、自分の手取りは400ユーロ(約4万5000円)だけ。それも借金の返済に持っていかれてしまうので、(お金を)見ることなどない〉―――まるで、借金をカタに売られてしまったような状況ではないか。

 しかしこうした労働状況は、モデル業界に蔓延しているものらしい。記事ではほかのモデルたちも、労働の報酬として服やハンドバックを渡された、あるファッション誌の撮影では対価を支払われたことがない、などの証言が飛び出している。

 なかでも気になる証言は、〈(エージェンシーから)一番搾取されやすく、不当な契約を結ばされがちなのは、現在出演モデルの大半を占めている東欧とブラジル出身者〉というものだ。これでは、英語の読み書きに難のあるモデルを「罠」に陥れているようなものではないか? 人種差別にもつながりかねない、不当な労働契約だ。

モデルへの「虐待」を内部告発

 2017年3月、米国のキャスティングディレクター、ジェームズ・スカリー氏は、自身のInstagramに〈パリのオーディションにおける扱われ方でトラウマを受けたと言うモデルたちがどれほどいるか〉と書き出し、あるオーディションで行われた「虐待」を内部告発した。

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 スカリー氏によれば、同年のパリ・ファッションウィークで「バレンシアガ」のショーに出演するモデルをキャスティングした際、およそ150名ものモデルたちが〈窮屈な階段の吹き抜けで3時間にわたって待たされていた〉という。なかには暗いところに閉じ込められたモデルもいたというが、現場にいたキャスティングディレクターたちは、放置したまま昼食を取りに出かけて行った。

 まるでモデルをモノ扱いする現場の実態が明らかになると、バレンシアガは被害を受けた150名のモデルに謝罪の手紙を送り、問題を起こした2名のキャスティングディレクターを解雇。〈この出来事を糾弾し、モデルたちの労働環境に最大の敬意を払うよう懸命な努力を続ける〉と、声明を発表している。

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