保育室を開設しても……いずれは更地に戻す予定の土地
しかし、反対する意見にはもっともと思われるものもある。まず、港区は昨年から計6回の住民説明会を開いたというが、2017年6月に行われた1回目の「整備計画説明会」には、参加住民はたったの3人だったという。また、2017年8月に第3回目の「整備計画説明会」が開かれてから1年以上の空白期間を経て、2018年9月にいきなり「工事説明会」に移行したことも、混乱を招いたようだ。十分な説明がなされていたかは不明である。
しかし、じつは「白金台三丁目遊び場」は、2023年4月に開通する環状4号線の延伸予定地となっており、保育室が開設しようがしまいが、いずれは更地になる予定なのだという。保育室反対派の意見には、〈建設費用2億7000万円も使って、4~5年の使用で取り壊すのは税金の無駄〉という声もあった。それはもっともだ。一方で〈木を切るな〉〈遊び場をなくすな〉という地域視点の主張とは矛盾する。どのみち木は切られ、遊び場はなくなる。この計画自体、どうなのだろうか……。
柔軟かつ、合理的な解決策が必要
都心の待機児童問題が深刻化するなかで、保育施設の増設が急務であることが社会的に認知されていながらも、ここまで否定的な声が大きいというのは残念であり、ショックなニュースだ。
しかし、現実にはこうしたトラブルは減らない。2016年4月にも、千葉県市川市で開園を予定していた保育園が、近隣住民から「子どもの声でうるさくなる」との指摘を受け、建設中止に追い込まれたこともあった。
白金台の一件においても、不寛容な反対派の住民たちにネガティブな感情を抱いたという声もあれば、港区側の見通しの甘さを指摘する声もある。地域住民の子育て理解促進はもちろん必須だが、港区も新規建設だけでなく既存の建物を活用するなど、柔軟かつ合理的な解決策に結びつけてほしい。
(今いくわ)
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