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嫌いなはずが
安倍晋三総理は10月15日に臨時閣議を開き、そこで2019年10月1日より予定通り消費税を現行の8%から10%に引き上げることを表明しました。
予定通りとはいえ、元来経済成長重視派で、消費税引き上げには慎重であった安倍総理だけに、ここでの引き上げ表明は意外と受け止められました
消費税を上げれば景気が悪くなる
もともと消費税は嫌いなうえに、前回2014年春に消費税を引き上げた際には、個人消費が大きく落ち込み、マイナス成長に転じるなど、景気に大きなダメージを与えたことが、安倍総理の脳裏に焼き付いていて、いわばトラウマのようになっています。政権内にはいっそのこと、消費税を引き下げてはどうかとの声さえ上がっていました。
元来、消費税引き上げの狙いは、日本の財政が持続不能なほど赤字額が大きく、これを減らすために増税が必要という点と、今後も増え続ける社会保障費を賄うための安定財源が必要、ということでした。一部社会保障費に充てる以外は、政府の赤字を減らすための増税、つまり税金を徴求してそれを使わずに貯蓄するようなものですから、その分需要が減って景気は悪くなります。
しかも、あらかじめ増税で物価が上がるのがわかっているので、買いだめできるものは消費税引き上げ前に駆け込みで買いだめし、引き上げ後にはその分消費が反落します。したがって消費税を引き上げれば、増税分の需要が減るうえに、駆け込み消費が大きければ、その反動も大きくなる分、ダブルで景気は悪くなります。前回14年の引き上げでは、消費は1年近く落ち込んだまま浮揚しませんでした。
今回は税率の引き上げ分が8%から10%への2%で、前回の3%引き上げに比べれば影響はわずかながら小さく、しかも従来の非課税品目(家賃や保健医療、教育)に加えて、軽減税率が食料や新聞の月ぎめ購読料などにも適用されるため、消費税引き上げの対象は消費総額の約6割(前回は約8割)になるので、影響は前回の半分だとの議論もありますが、もともと賃金が増えず消費が弱いところに追い打ちをかけることになります。
それなのにいったいなぜ引き上げをあえてこの時期に表明したのでしょうか。2つの理由が浮上しています。