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トランプ政権を生んだのは“投票しない人たち” 小川彩佳アナがアメリカ取材で見た「国民の政治への幻滅」

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『華氏119』公式ホームパージより

 マイケル・ムーア監督によるドキュメンタリー映画『華氏119』が日本でも11月2日に公開された(アメリカでの公開は9月21日)。『華氏911』ではブッシュ政権をえぐり、また、『ボウリング・フォー・コロンバイン』では銃規制を、『シッコ』ではアメリカの医療制度の問題を取り上げるなど、常にリベラルな立ち位置から映画をつくり続けてきた監督が今回取り上げたのはドナルド・トランプ大統領。

 この映画は11月6日に行われる中間選挙をにらんだ反トランプ映画と宣伝されており、テレビCMやチラシのキャッチコピーにも「トランプのからくり、全部見せます」といった言葉が並んでいるが、実際に内容を見てみると少し様子が違っていた。

 もちろん『華氏119』では、差別的な言動を繰り返すことで人種の対立を煽り、また、大企業優遇政策を押し進めて貧困層の生活を苦しくさせているトランプ大統領に対する猛烈な怒りが込められている。その怒りがこの映画最大のテーマなのは間違いない。

 ただ、『華氏119』でのマイケル・ムーア監督の怒りの矛先は、トランプ大統領や共和党のみならず、民主党へも向けられている。

 特に、『FAHRENHEIT 11/9』のタイトル文字が出るまで、冒頭10分ほどのアバンタイトルの部分は、民主党への強烈な皮肉に満ちている。

 『華氏119』の冒頭10分ほどは、2016年の大統領選挙直前から当日にかけての狂騒が描かれている。そのときは、民主党も、民主党支持者も、メディアも、誰もがアメリカ初の女性大統領が生まれると信じていた。ヒラリー・クリントン候補の側には、ジョージ・クルーニー、ジェイ・Z 、ビヨンセ、ケイティ・ペリーといった芸能人も顔を揃え、祝勝会の会場も非常に豪華なものが用意されていた。

 一方のトランプ陣営は、熱心な支援者ですらも一様に暗い顔を浮かべるような状況。しかし、結果はご存知の通りとなった。

 マイケル・ムーア監督はそんな状況のなか、トランプ大統領の誕生を予期していた数少ない文化人として知られている。

 それは、ミシガン州フリントの出身で「ラストベルト」に生まれ育った彼が、「市井の人々」の考えを知っていたからだ。

 映画ではトランプ大統領誕生にいたった背景に民主党の問題もあると描かれる。2016年の民主党大統領予備選では、公立大学の無償化、金融業界の規制、国民皆保険、企業助成政策の廃止などを訴えて若者や貧困層の人気を集めたバーニー・サンダースが台頭した。

 しかし、予備選や党員集会の結果に拘束されない特別代議員の票のほとんどがバーニー・サンダースを支持しなかったことで、民主党の指名候補はヒラリー・クリントンとなった。

 映画では、民意よりも利権が優先された結果に失望した民主党支持者のなかには、選挙に行かない人も多かったと説明している。そういった背景もあり、2016年の大統領選挙の投票率は史上最低レベルの55%に落ち込んでしまう。それでもヒラリー候補のほうが300万票多く票を集めたが(トランプは6300万票でヒラリーは6600万票)、選挙人制度によりトランプ大統領が誕生することになる。

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