トランプ政権を生んだのは“投票しない人たち” 小川彩佳アナがアメリカ取材で見た「国民の政治への幻滅」

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黙っていたら少数派に権力を握られる

 『華氏119』で、マイケル・ムーア監督は、アメリカという国はそもそも「左派」の国であると言う。統計をとれば、大麻の合法化にも、人口妊娠中絶にも、公立大学の無償化にも、軍事費削減にも、銀行の解体にも、銃規制にも、多くの人々が賛成している。すべてトランプの政策とは真逆である。

 ではなぜ、民意とは対照的な政治が進んでいくのか。それは、きちんと民意を示していないからだ。

 2016年の大統領選挙で最も大きな勢力はなんだったのか? それは、トランプでもヒラリーでもなく、誰にも投票しなかった人だ。無投票の数は1億人にもおよぶ。

 頭のなかで前述のような意見をもっていても、投票所まで足を運ばなければその民意は反映されない。そして結局は、多くの人の考えを代表しているとは言い難いトランプのような人物が大統領になり、やりたい放題を尽くすことになってしまう。

 『華氏119』でマイケル・ムーア監督は、トランプ大統領に関して「多くの公約を実現してきた」と言う。その「公約」とは、法人税の大幅減税をはじめとする富裕層優遇政策を指している。強烈な皮肉だ。

状況は日本も同じ

 ここでマイケル・ムーア監督が訴えているメッセージは、日本にとっても、太平洋の向こうの遠い国で起きている「対岸の火事」ではない。

 『華氏119』で訴えられていた投票率の問題は日本も大して変わらない。むしろ、日本のほうがひどいぐらいだ。2017年の衆議院選挙では53.68%で、2016年の参議院選挙も54.70%(総務省ホームページより)と非常に低い投票率となっている。有権者の半分近くは投票していないのだ。

 そして、日本でも、投票率が低ければ低いほど利権をもっている人たちに有利な結果となるのは同じだ。彼らは既得権益を守るため、必ず投票に行くからだ。

 結果としてトップの座についた人間が、富裕層に有利な政策を進め、国民の分断を生んでいるという状況も変わらない。

 政治に幻滅したとしても、それによって投票を棄権するということがどんな未来をつくることになるのか──『華氏119』が訴えるメッセージは日本でも重く響く。

(倉野尾 実)

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