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弁護士懲戒請求の問題は「インターネット」ではなく「ヘイト」。議論を矮小化させてはならない

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『クローズアップ現代+』(NHK)番組ホームページより

 日本に蔓延するグロテスクな排外主義を改めて浮き彫りにした弁護士への大量懲戒請求。その騒動を引き起こしたのはいったいどんな人たちだったのか。2018年10月29日放送『クローズアップ現代+』(NHK)では「ネットで社会が分断…いま何が起きているのか」と題して、その実態に迫っていた。

 この騒動は、「朝鮮人学校補助金支給要求声明に賛同し、その活動を推進する行為は、二重の確信的犯罪行為である」といったヘイトに根差す理由付けで複数人の弁護士のもとに懲戒請求が殺到したというもの。

 この懲戒請求を主導したのは、排外主義的な記事を多く載せてネトウヨ層の支持を集めているブログ「余命三年時事日記」。このブログがテンプレートの懲戒請求書を載せ、賛同者が署名捺印したことで大量の懲戒請求が現実のものとなった。

 弁護士への懲戒請求とはそもそも、過大な報酬を要求したり、事件を放置するなどの悪質な場合に使われる制度であり、日本弁護士連合会は今回の件について「懲戒制度の趣旨とは異なる。検討には値しない」としている。

 逆に、弁護士側から名誉毀損であるとして懲戒請求を行った側に対して訴訟を起こす動きがあり、すでに弁護士側が勝訴する例も出ている。

なぜヘイトを垂れ流すブログにのめり込んでしまったのか

 『クローズアップ現代+』では、実際に懲戒請求を行った人はいったいどんな人たちだったか、その実像に迫っていた。NHKは懲戒請求を行った人のうち470人に接触したという。

 平均年齢は55歳、6割が男性で、職種は公務員、主婦、医師、会社経営者など多岐にわたっていた。平均よりは多少「高齢」かつ「男性」側に寄っている部分はあるものの、基本的には「普通の人」ということである。

 彼らはいったいなぜ排外主義を標榜するブログにのめりこみ、そして懲戒請求という行動を起こすまでにいたってしまったのか。

 まず番組に登場した50代のタクシー運転手の男性は、それまで朝鮮人学校をめぐる議論に興味もなかったし、職場には在日コリアンの同僚もいて親しく付き合ってきたと証言する。

 そんな彼が変わったのは、6年前。それまで勤めていた会社を辞め、さらにギャンブルでも負けが続き、借金で首が回らなくなった。そんな生活状態のときに出会ったブログにのめりこんでしまった。

 そして、ネットを触っていると出てくる関連動画などを暇に任せて見ているうちに「在日コリアンは優遇されている」との話を鵜呑みにするようになっていき、ついには今回の懲戒請求にまでいたってしまったのだ。

 続いて『クローズアップ現代+』の取材に応じた50代の専業主婦はこのような経緯をたどっている。彼女はフェイスブックを通じて知り合った人と交流を深めていくうちにブログと出会い、日本を礼賛する記事などに心酔していった。彼女はそのときの精神状態についてこう語っている。

<自分が知りたい情報だったと思うんですね。そういうことを知ると、他がおろそかになってしまうというか、嘘もあるんですけど、すべて信じてしまいますね。それが間違っていたか合っていたかは関係なく思ってしまいましたね>

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