社会

弁護士懲戒請求の問題は「インターネット」ではなく「ヘイト」。議論を矮小化させてはならない

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「フィルターバブル」と「エコーチェンバー」

 このように、インターネットの検索システムにより、ユーザーが好ましいと思う情報ばかりが選択され、他の情報が手に入らなくなる状況を「フィルターバブル」と呼ぶ。

 また、そのようにして、自分と同じ意見ばかりが飛び交う閉じられた情報環境のなかに身を置き続けると、ますます自分の意見が凝り固まっていってしまう。「エコーチェンバー」と呼ばれているこの現象は、ネット環境の確立した現在、多くの人に起きていることだ。

 閉じられたコミュニティに身を置くことは、悪影響を与えることも多い。先に登場した50代の専業主婦は、<自分の頭で考えて、思いとどまることができなかったかなって。ちょっと過激さが加わってしまった。偏り過ぎちゃって戦闘モードに入ってこういうところ(懲戒請求)まで行ったので。その世界に入っていくと、それに慣れてしまって、自分のなかの過激さも、そこにやっぱり同調していると思いますね>と証言し、一部のネット言説のみに触れ続けることでだんだんと感覚がマヒしていったとも話している。まさしく先にあげたような現象が起きていたということだろう。

 『クローズアップ現代+』では、インターネットによって父がまったくの別人になってしまったと嘆く女性も登場した。現在70代の彼女の父は5年ほど前にパソコンの扱い方を覚え、それ以降は朝から晩までインターネットをして過ごすようになったという。

 その結果、かつては子どもたちに<自分と異なる意見を受け入れることも大切>と教えていた父が日に日に変貌していった。彼女はこのように語っている。

<『中国人が攻めてきても知らないからな』とかそういう感じで。そこで私たちに『バカだな』とか『これは常識なんだぞ』とか、いろんな言葉を言ってきましたね。父親はもう変わってしまったんだ、もう二度と戻ってこないんだとわかったので、もう話しかけないようにしようって、近寄らないように、とにかく身を守ろうって心がけていました>

 インターネット情報環境の特性を理解せずにのめり込んでいくと、冷静であれば一笑に付すような陰謀論にすら、「これが常識なんだぞ」と言ってしまうぐらい心酔してしまうという具体例である。

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