社会

弁護士懲戒請求の問題は「インターネット」ではなく「ヘイト」。議論を矮小化させてはならない

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 このように弁護士懲戒につながる状況を説明した番組の終わりには、国際基督教大学副学長の森本あんり氏が今回起きた現象を総括。<彼らがしたことは、なにか日本のためにしたいとかですね、いまの政治、あるいはマスコミに任せただけではできないことを、自分の手で小さいながらも行いたい、そういう社会参加の欲求というのが、実はその下に隠れていると思います。自分の存在意義の確認をしたいという欲求ですね。承認欲求というふうに言うこともありますけれども、(ネットでは)自分の納得できる仕方で説明してくれる原理があればですね、大切な価値のあるものとして喜んで人は受け入れると思います>とまとめていた。

『クローズアップ現代+』で指摘されなかった重要なこと

 しかし、番組のなかでひとつ指摘として欠けていたことがある。

 そもそも、彼らが弁護士懲戒請求を出した背景には、グロテスクなレイシズムの問題があったという点だ。今回の騒動の大元にあるその問題について番組で触れられることはなかった。

 確かに、彼らがヘイト的な思考に凝り固まっていった背景には「フィルターバブル」や「エコーチェンバー」といったインターネット特有の情報環境が大きな影響を与えているのは間違いない。その状況について分析することは、インターネットによってもたらされた社会の分断を解消する手立てのひとつとなるかもしれない。

 ただ、その前にひとつ確認しておきたいのは、インターネット上で主張されている醜いヘイト的な言説を批判するどころか、なんの疑いもなく受け取ったのは、彼らの責任であるということだ。そこに、「インターネット特有の現象」云々は関係ない。「国籍や出自で人を差別することは人として正しいことか否か」という簡単な問題である。

 彼らは主体的に排外主義的な主張を行うコンテンツを享受し、そういった考えに心酔することで、弁護士懲戒請求という愚行に走った。ネット上に飛び交う「大きな声」に惑わされた「被害者」ではない。むしろ、ヘイトを垂れ流して多くの人々を傷つけ、社会の分断を深めようとした「加害者」であった。そこに弁解の余地はない。

 繰り返すが、彼らが差別的な思考を凝り固めていった背景にあるインターネットの情報環境について検証することの意義はある。

 ただ、それによって、差別的な考えを拡散させたことの「罪」が矮小化される議論には違和感を拭えないのである。

(倉野尾 実)

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