保険と貯金は何が違う?
だとすれば別に医療保険など入らず、その分を貯金しておいて、もし入院するようなことになればその貯金を下ろせばいいだけのことです。また、民間企業の保険は、リスクが高まると保険料も上がるのに対して、公的医療保険は、逆に高齢者になると負担が減ります。これは、制度自体が営利を目的としておらず、社会保障制度の一環として一定割合の税金も投入し、社会全体で制度を支えていこうとしているからです。まずは、こうした公的な制度を使うのを優先すべきでしょう。
齢をとると病気のリスクが高まるのは事実です。問題は、それに対して民間保険会社の医療保険で備えるのが正しいのか、貯蓄で備えるのが正しいのか、ということです。基本は公的医療保険制度に頼りながら、そこでカバーできない部分を自分の貯蓄で賄うのが一番正しいやり方でしょう。
では、一体どうして多くの人がいとも簡単に民間医療保険に入ってしまうのでしょうか。それは「リスクに対しては保険をかけるもの」という連想から「高まるリスクに保険で備えましょう」という宣伝文句を何の抵抗もなく受け入れてしまからです。このような現象を心理学用語では「ヒューリスティック」と言います。本来であればじっくりと論理的に考えなければならない事柄を、今までの経験や勘で直感的に判断してしまう現象です。
「メンタル・アカウンティング」という心理的錯覚
そしてもう1つの理由が「メンタル・アカウンティング」という現象です。これは、同じお金であるにもかかわらず、自分の心の中で勝手に仕分けされてしまっている現象を言います。先に述べたように、医療に関する出費はまず公的医療保険で賄われるべきです。その上で足りない部分や公的保険ではカバーできない「差額ベッド料」、「通院のタクシー代」などを自分の貯金から引き出して使えばいいわけです。ところが、人は自分のお金を使うことに抵抗があります。一方、保険ならば保険会社が支払ってくれるものだと考えるのです。
貯金は「おろす」と表現しますが、保険の場合は「おりる」と言います。この言い方も実に巧みなフレーズです。なにしろ保険が“おりる”わけですから、どこからかお金が降ってくる、あるいは誰かが支払ってくれるという感覚に陥ってしまいます。でもこれは実際に保険会社が自腹を切って払ってくれているのではなく、自分が払った保険料のうち、保険会社の社員の給料などの経費を差し引いた中から支払われているにすぎません。だとすれば、自分のお金を貯金しておき、必要な時に必要なだけそこからお金を出す方がずっと合理的です。
保険は金融商品です。したがって、情緒的に考えるのではなく、確率とコストが自分の出すお金に見合うかどうかをしっかり判断することが大切と言えるでしょう。
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