政治・社会

売春の規制とセックスワーカーの権利 性産業の市場経済を考える

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「フルーツ宅配便(1)」

 フランスでは初となるセックスワーカー(性労働者)のための祭典が11月初め、パリで開催された。セックスワーカーたちの権利向上とともに訴えたのは、政府の規制強化に対する批判だ。

 フランスは2016年4月の売春法改正で、買春した客に最高1500ユーロ(約19万円)の罰金を科す罰則を導入した。再犯なら倍額以上の罰金が科される。

 AFPの報道によれば、セックスワーカーの労働組合「STRASS」の広報担当者は「この法律によって性労働者たちは収入が減り、暴力にさらされやすくなった」と批判。法改正のためにセックスワーカーたちが警察署から離れた人目につかない場所で客と会わざるをえなくなり、暴力の被害に遭いやすくなっているという。

 女性の権利を守れと叫ぶ人々は、しばしば売春を「性の商品化」「性的奴隷」などと非難し、政府に規制を求める。しかし、フランスのセックスワーカーが訴えるように、売春を規制すれば、貧しく、他に生活手段のない女性をかえって苦しめることになる。

デリヘルで働く貧困女性のそれぞれの事情 

 その現実を教えてくれる日本のマンガがある。地方都市のデリバリーヘルス(デリヘル)でさまざまな事情を抱えて働く女性たちの人間模様を描く、鈴木良雄の人気作『フルーツ宅配便』(既刊1〜6巻、小学館)である。来年1月、テレビ東京の「ドラマ24」枠で連続ドラマ化されることが決まった。

 客のいる自宅やホテルなどに女性が派遣され、性的サービスを行うデリヘルは、性交(いわゆる本番)は行わないことになっており、法的には売春ではない。けれども物語から得られる教訓は、売春を含む性労働全般に共通する。

 源氏名「アセロラ」を名乗る女性は高校時代、シングルマザーの姉、その子ワタルと3人で暮らしていたが、ある日、姉がひったくりにあった時のケガが原因で急死。アセロラは高校を中退して働き、ワタルを実の子同様に育てる。大学に行かせる費用を稼ぐために選んだのは、性風俗産業だった。

 ワタルの大学卒業と就職が決まり、風俗をやめることにしたアセロラ。デリヘル「フルーツ宅配便」の送別会で店長の咲田らに向かい、しみじみとこう語る。「風俗なかったら大学なんか行かしてあげられなかったわ…」(第3巻)

 親のいないきょうだいの姉「マスカット」は弟の大学受験のため、昼は弁当屋、夜はデリヘルで働く。弁当屋の仕事で食品加工会社の跡取り息子と親しくなり、結婚を申し込まれるが、デリヘルに勤めていることが知られ、破談する。

 「なんでデリヘルなんか…?」と尋ねる跡取り息子に、マスカットは「お金が欲しいから」と家庭の事情を説明する。「だからって何もデリヘルに…」という相手の言葉に対し、こう問い返す。「ほかに何がある? 学歴もなんにもないわたしに、ほかに何がある?」(第4巻)

 女子大学生の「パッションフルーツ」ことリホは幼い頃、無頼漢の父親から虐待を受けて育つ。母親が去ったのを機に2人で祖父の家に住むようになるが、父親の暴力はエスカレートするばかり。思い余った祖父は実の息子に手をかける。

 警察の捜査が迫るなか、祖父はリホを電車に乗せ、別の町に住む妹の聡子おばさんに託す。「聡子おばさん、年金暮らしだから大学は無理って言われたんだけど、どうしても大学行きたくて……それが風俗始めた理由」。リホは恋人にこう打ち明ける(第6巻)。

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