「選択的夫婦別姓制度」をニューヨークで記者会見〜アメリカの別姓事情

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日米そもそもの違い〜戸籍の有無

 アメリカでも伝統的な価値観を持つ女性は結婚に際して姓を夫のものに変え、男性も「妻には自分の姓を名乗ってほしい」と考える。だが、アメリカは日本に比べると「家」の概念が薄い。

 日本には戸籍があり、家によって個人が括られ、「戸籍筆頭者」が存在する。アメリカには戸籍はなく、出生証明書が個人を証明する根源的な書類だ。あくまで個人を証明するものであり、そのための項目として両親の名も記されている。結婚は配偶者2人の名前が記された「結婚証明証」によって証明される。

 子供の姓についても、アメリカは非婚出産、離婚家庭が多く、少なくともニューヨークの都市部では親子の姓の不一致は珍しくない。筆者は息子の学校での三者懇談の際、先生が「親子の姓は一致しない(ことが多い)」ことを前提に名簿を見ていることに気付いた。その良し悪しは別として、アメリカの現状だ。

 青野氏が進めている選択的夫婦別姓制度は、「戸籍法上の氏(=呼称上の氏)」として旧姓を使い続けられるようにしよう」というものであり、戸籍の撤廃は求めておらず、戸籍に記される夫婦の姓は同じものになる。青野氏も「戸籍という考え方自体に反対される方にとっては、今回の訴訟では何も解決しません」と書いている。

 日本人にとっては当たり前の戸籍制度だが、世界を眺めると戸籍制度を持つのは日本、台湾、韓国のみだ。台湾、韓国ともに日本の統治時代を持つ 。その韓国も2008年に家族単位の制度を廃止し、個人を基盤とした登録制度に移行している。

 ヨーロッパではドイツが「家族簿」という、日本のような「筆頭者」こそ持たないが、戸籍と比較的似たシステムを用いている。昔、大きな力を持っていた教会が人を管理するための「教会簿」を持っており、そこからの解放として作られたものだが、ナチス時代には人種管理に使われている。つまり、戸籍は政府が国民を厳しく管理するために都合がよい制度と言える。

 したがって日本もいずれは戸籍の存在そのものを検討することになると思われるが、青野氏の提案は別姓のあり方を変えるために、現段階ではとりあえず有効かつ最短の方策なのかもしれない。

青野慶久
選択的夫婦別姓訴訟で実現したいことへのご理解とご支援のお願い
https://note.mu/yoshiaono/n/nd26d89d46048

法務省
選択的夫婦別氏制度(いわゆる選択的夫婦別姓制度)について
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji36.html

追記:蛇足ながら今回の記事のためのリサーチ中、偶然に見つけたアメリカ人のアントレプレナー精神を。MissNowMrs.comというサイトは、結婚によって改姓する女性のために社会保障カード、パスポート、運転免許証、選挙人登録、銀行口座、クレジットカードといった全ての(またはほとんどの)アメリカ人が届け出を必要とする先への手続き準備を代行するサービスだ。設立者は自身の結婚・改姓時に大変な思いをしたと言う女性である。
(堂本かおる)

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