10月2日、天丼てんやの新業態店「大江戸てんや」が東京・浅草にオープンした。特徴は、現金を一切扱わない完全な「キャッシュレス」運営であることだ。
電子マネーやクレジットカードなど、現金を使わない決済手段としてキャッシュレスは注目を浴びている。いくつか課題も見えてきた中で、キャッシュレスのメリットを改めて考えてみたい。
「キャッシュレス」対応店舗が急増
経済産業省によれば、日本におけるキャッシュレス決済の比率は約2割。諸外国に比べて低いため、「キャッシュレス後進国」との指摘もある。都市部を中心に交通機関やスーパー、コンビニなどでキャッシュレス対応は進んでいるものの、まだまだ現金を使う人は多い。
これに対して政府は、2025年までにキャッシュレス決済の比率を40%に引き上げ、将来的には世界最高水準となる80%を目指すとの目標を掲げている。電子マネーやクレジットカードが使いやすくなることに異論がある人はほとんどいないだろう。
だが、そこから一歩進んだ「完全キャッシュレス」が現れ始めた。たとえばロイヤルホールディングスは、2017年11月に研究開発を目的とした「GATHERING TABLE PANTRY 馬喰町店」をオープン。現金を一切扱わない完全キャッシュレスに取り組んでいる。
前述した「大江戸てんや」でも、ロイヤル傘下のテンコーポレーションが完全キャッシュレスを採用しており、浅草を訪れる訪日外国人から人気を博しているという。
完全キャッシュレスはまだ馴染みが薄いこともあり、どちらの店舗でも入店者に説明し、現金の利用客は断っている。せっかくの来店客を逃すのはもったいないが、現金の管理が不要になることは大きなメリットだ。
飲食店をはじめ、店舗の運営ではレジの締め処理が大きな負担になっている。だが、完全キャッシュレスなら現金を数える必要がなく、強盗や空き巣に狙われる心配もない。人手不足が深刻化する中、現金を扱わないことによる機会損失と効率性を天秤にかけ、導入に踏み切る企業は今後さらに増えそうだ。
キャッシュレスで先進国とされるスウェーデンでも、同様の動きがある。ストックホルム中央駅の周辺では「現金お断り」の完全キャッシュレス店が増えている。現地ではデビットカードやモバイル決済が普及しており、ユーロを導入していないため外国人は最初からクレジットカードを使うことが多いなど、キャッシュレスと相性が良い国といえる。
1 2