『獣になれない私たち』新垣結衣を罵倒する黒木華の役に「ぶん殴りたい」批判集中の理由

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 朱里は、京谷のことを本当はまだ好きなのだろうか。京谷が晶と別れて、また自分のことを好きになれば、ここで一緒に暮らせるし気まずい思いもなくなるという打算なのか、それとも理屈ぬきの「好き」なのか。もしかしたら後者が強いのかもしれない。

 朱里は「どうして? なんで私の方だけ京ちゃんのこと好きでい続けないといけないの?」と激昂し、怒りをヒートアップさせていく。「あなたみたいなキラキラした人、大嫌い」「お前とは違うんだって言いたいの?」「いつまでも無職でなんにもしてない私とはそれは違うよね」と晶への恨み節は止まらない。

 ブラック激務に疲弊している晶は、「私だってラクして楽しく働いているわけじゃ……」と言い返すが、この言葉で朱里はさらにヒートアップ。「なに贅沢いってんの?」「仕事があって仕事ができて、好きな人に好きって言ってもらえて、お義母さんにも気に入られて、何でもあるじゃん! あなたが持ってる色んなもの、私なんにも持ってない!」と泣きだしてしまう。

 晶はそんな彼女をみて、「私はあなたが羨ましい。そんな風に泣けて」とぽつり。晶は仕事でもプライベートでも我慢を続けており、人に言いたいことを言って思いっきり泣ける朱里が自由な“獣”に見えたのだろうか。

 けれども、朱里はこの部屋からほとんど外に出られない。周りからは「ただのワガママ」で怠惰に見えるだろうし、被害妄想の卑屈な女にも見えるかもしれないが、彼女自身もどうしようもなかったのではないか。ワガママに喚き散らせる朱里だが、なんと脆そうなことだろう。

京谷と晶のすれ違いは、全部朱里のせい?

 朱里との対面は、晶にとって想像以上に重いものだった。我慢を重ねてしまう性分の晶は、朱里の「贅沢を言うな」という言葉を深く受け止めたのだろうか、今まで以上に笑顔を振りまきながら完璧に仕事をこなすように。小声で「幸せなら手を叩こう」を口ずさんでおり、今にも過労で倒れそうな“やばい”雰囲気を漂わせている。闇を表現する演出が巧みだった。

 追い討ちをかけるように、同僚は「晶が仕事を頑張るとみんなが幸せ」という趣旨のホメ言葉を無邪気に繰り出す。晶が我慢すればみんなが幸せになる……この状況に、彼女はいっそう追い詰められていくのであった。

 さて、獣な人妻との浮気事件以降、晶と京谷は連絡を取っていなかったが、彼もまた彼なりに、晶との結婚を思い描いていたようだ。京谷は一人で決断をする。「もう出ていかなくてもいい」「俺がここを出ていく」と、朱里にマンションを譲ることを“すでに決めたこと”として告げるのだった。

 支払いの残るローンや固定資産税などは京谷持ちで、朱里はウサギとともにこの広い部屋を自由に使っていい。でも、それは朱里が望んだことだったのだろうか。京谷は、晶にも朱里にも相談せずに、こんな大きなことを一人で決めてしまった。しかも最後に、京谷は朱里との関係を「愛じゃなかった」と断言して去っていく。朱里の胸中は、うかがいしれない。

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