「強き女性」を体現するファン・ビンビンにさらなる脱税疑惑 中国芸能界の実相と習近平“反腐敗キャンペーン”との相克

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中国芸能界の女帝が吐いた弱音に失望するファンも

「ファン・ビンビンたるもの、もっとうまくやれよと思った国民もいたはずですよ。あの女帝が屈する姿なんて見たくなかった」と語るのは、30歳女性のSさん。

 こうした意見の裏には、ファン・ビンビン自身の自己プロデュース能力への思いがあるという。

「彼女は、『人設』(キャラクター設定)で成功した女性。従来、理想とされてきたような『か弱くて男性の一歩後ろを歩く女性像』にノーを突き付け、『自信家で男性に頼らない独立した女性』というイメージで自分を売り出していきました。それまでの『売れっ子女優は資産家と結婚して一丁上がり』という定番パターンを見下すかのように、『私自身が裕福なので、裕福な家庭に嫁ぐ必要はありません』とすら言い切ったことがあります」

 2015年には、中国史上唯一の女帝・武則天を題材にしたテレビドラマ『武則天-The Empress-』で主演。“独立した強き女性”というイメージは、より強固なものになった。

「表に出る際の衣装やメイクなどでも、それを意識していると思います。かつての女優たちのようなかわいらしい姿、妖艶な姿だけでなく、パンツスーツなどの中性的な姿も持ち味としているんです」(同)

 女優、実業家としての実力、そしてこうした自己演出により、ファン・ビンビンは現在の地位を獲得してみせる。さらに、男性優位社会の中国芸能界において、男性に対する俗語的な呼称である「爺」を用いて「范爺」などとも呼ばれたという(「范」は、ファン・ビンビンの漢字表記「范冰冰」の姓)。

「そのファン・ビンビンが、『欲に目が眩んで法を犯したこと、長年にわたって国家の利益より個人の利益を優先させたことを、心から恥じています』だなんて、ちょっとがっかりですね……。脱税の蔓延した中国芸能界でも、女優でなく男性俳優ならばこの告発はなかったのかなと思うと、女性としても暗い気持ちになります」(同)

 冒頭の「謝罪の手紙」では、「今後は著名人として、自国の映画業界ならびに社会にとって良い手本になるよう努めていきます」とも語っていたファン・ビンビン。さらなる脱税疑惑によって一層彼女の地位は失墜していくことになるのか、それとも地の底から力強く這い上がってみせるのか。ひとりの女性の物語としても注目したいところだ。

(文/有馬ゆえ)

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