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月亭方正は「イジられるのがつらかった」 大晦日のダウンタウン『笑ってはいけない』シリーズの岐路

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「絶対に笑ってはいけないアメリカンポリス24時」

 NHKの紅白歌合戦と並んで、もはや日本の大晦日の風物詩的コンテンツとなっている『ガキの使いやあらへんで!』の特番である“笑ってはいけない”シリーズ(日本テレビ系)。お笑い芸人・ダウンタウンを筆頭に、月亭方正やココリコなどお馴染みのレギュラーメンバーが出演している。設定されたシチュエーションの中で次々と現れるゲストを見ても、その会話を聞いても、なにが起こったとしても決して笑ってはいけない――。笑ってしまったものには罰ゲームが課されるという企画だ。

 もともと同シリーズは2003年の7月の『ガキの使いやあらへんで!』のレギュラー番組内で放送された企画から派生したもの。2003年7月に放送された際のタイトルは『絶対に笑ってはいけない温泉宿1泊2日の旅』で、当時筆者もこれをリアルタイムで観ており、「抜群に面白い!」と大笑いした覚えがある。

 笑ってはいけないシリーズは放送当初から人気が高く、大晦日に特番として放送されるようになったのは2006年から。2018年も大晦日の放送が決定しているようで、今年のシチュエーションはまだ正式発表されていないが、11月13日発売の「週刊女性」(主婦と生活社)は、考古学研究所を舞台にした『ヘイポー財団法人お豆考古学研究所』という設定のもと、すでに11月に撮影を終えていると報じている。

 「紅白は退屈」と捉える層から絶大な人気を誇る大晦日恒例の同シリーズであるが、同誌ではダウンタウンの松本人志が「(笑ってはいけないシリーズを)やめたい」と発言しているとの気になる情報も掲載。「これだけ長く続いてしまったゆえのマンネリ化で松本が『やめたい』と話している」とのテレビ誌ライターの証言に加えて、今年の夏にはいつもイジられ役である月亭方正が、「長い間イジられることが辛かった」と発言したことも影響し、番組存続が危ぶまれていると伝えた。

月亭方正「自分を殺してみんなを楽しませていた」

 では、その月亭方正の発言とはいったいどんなものだったのか。それは、シドニーで独演会をおこなった方正が、オーストラリア情報webサイト「JAMS.TV」でのインタビューに応えたものを指している。2008年に落語を始めた彼が、2013年にはそれまでの山崎邦正から月亭方正に芸名を変更していることは多くの日本人がご存知の通りだが、彼は「落語に出会う前は、テレビ芸人としての自分が嫌だったんですよ」と明かしていた。

 なぜテレビ芸人としての自分が嫌だったのかというと、日本のテレビバラエティで定番化している演出方法が背景にある。

<テレビというのは団体芸で、僕の席は“いじられ芸”とか“リアクション芸”に決まってるんですね。MCもスタッフもお客さんも、みんながそういう僕を期待してる。でも、それを完全に良しと思っていたわけじゃなくて、自分を殺してみんなを楽しませていたところがあったんです。若いときは、『ええやん、自分が死んでもみんなが楽しければ。それが芸人ちゃうの?』って思ってたけど、歳を取るにつれて、だんだんつらくなってきたんですね>

 なるほどたしかにこの発言からすれば、彼はイジられ役を決して楽しんで受け入れていたわけではなかったことがうかがえる。イジられ役に誇りを持っている芸人もいるかもしれないが、少なくとも月亭方正は葛藤を抱えていたようだ。

 松本が「やめたい」と漏らしていたのが事実だとすれば、そんな月亭方正の本音を知ったことも理由なのだろうか。ただ、単純にマンネリ化の打開策が見当たらないことも大きいだろう。10年以上も続けていれば、どれだけ手を変え品を変えても、飽きは来る。

浜田のブラックフェイス事件はうやむやに

 昨年の企画「アメリカンポリス」でのブラックフェイス事件も、マンネリからくるものだったのだろうか。番組内でダウンタウンの浜田雅功が顔を黒く塗り、アメリカの俳優・エディ・マーフィーの物まねをしたことは、海外メディアも大問題として報じた。

 松本は年が明けた今年1月14日放送の『ワイドナショー』(フジテレビ系)にて、この騒動について「色々言いたいことあるんですけど、もう面倒くさいんで浜田が悪い、でいいんじゃないですか。あいつ干しましょう、国外追放」「浜田をエディ・マーフィの自宅まで謝りにいかせましょう」と、困惑を隠さなかった。おそらく本人たちには、この行為が差別であり禁忌だとの認識が非常に薄く、「なぜ怒られているのか本当にわからない」状態だっただろう。

 松本は「じゃあこれから、黒塗りはバラエティーでもう『ナシ』でいくんですかね? ルールブックが欲しいです」「今後黒塗りメイクの人が出てきて同じように叩かれなかったら、それは『浜田差別』になりますよね」などと話を展開した。今後黒塗りメイクのエンタメコンテンツが「叩かれなかったら」、松本としては「アイツはよくてなんでこっちはダメだったんだ」と憤るのだろう。

 問題の根幹を知ろうとしないから、納得できないままなのかもしれない。「過激なことをしたら叩かれた」との被害者意識が、モチベーション低下につながっている可能性もある。実際には「過激だったから叱られた」というより、「差別や歴史に関する知識がなさすぎたから叱られた」のだと思うが。

 とはいえ、笑ってはいけないシリーズの視聴率は毎年高く、紅白の裏番組の中ではトップを走っている。日本テレビとしてはそう簡単に大晦日の強力コンテンツを終了するわけにはいかないだろう。出演者の意向など丸め込まれてしまうのではないか。しかしもしも本当に松本が「やめたい」と考えているのなら、それが潮時というものだろう。ひとつの番組が20年続こうが30年続こうが、バラして新たなチャレンジに取り組む時期はいずれ来る。長く続けばいいというものではないのだ。

(エリザベス松本)

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