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「あおり運転」「悪質タックル」は流行語大賞として消費すべき話題なのか

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「現代用語の基礎知識」選 ユーキャン 新語・流行語大賞 HPより

 11月7日、「2018 ユーキャン新語・流行語大賞」のノミネート候補30語が発表され、「おっさんずラブ」や「TikTok」といった今年注目を集めた言葉や事象が選出された。エンタメ系はともかくとして、「あおり運転」や「災害級の暑さ」、「悪質タックル」といった言葉のノミネートには、強く違和感を覚える。

 確かに、「あおり運転」や「災害級の暑さ」は今年様々なメディアで大きく取り上げられ、ノミネートに値する“流行語”なのかもしれない。しかし、これらの言葉までエンタメ系と同じく「新語・流行語大賞」という括りに入れてしまって良いのだろうか。

あおり運転は被害者が、災害級の暑さは多くの死者を出した

 「あおり運転」は、昨年6月に東名高速道路であおり運転を受けたことが原因で夫婦が死亡した事件と、今年7月に大阪府堺市でバイクを運転していた男子学生に、乗用車を運転していた男が故意に衝突して転倒させ殺害した事件が、広く知れ渡る要因となった。

 東名高速道路のあおり運転で亡くなった夫婦には2人の子供がいる。堺市で殺された男子学生の母親は事件当日、夕食を作って息子の帰りを待っていたという。「あおり運転」が人気ドラマや人気アプリと同じ並びで、新語・流行語大賞にノミネートされていることを、遺族はどう受け止めるだろうか。

 「災害級の暑さ」も同様だ。消防庁によると、今年5~9月の熱中症による死亡者数は、昨年同期間よりも112人増の160人だった。多くの命が奪われた「災害級の暑さ」という言葉は、大袈裟な冗談でもなんでもない。むしろ国として対策すべき重要な事案だ。

 また、「悪質タックル」も連日テレビで報道され大きな話題を呼んだが、このフレーズだけを取り上げて流行語扱いするのはいかがなものか。タックルされた関西学院大学アメフト部の選手は試合に出場し、怪我の影響を感じさせないプレーを見せている。タックルした日本大学アメフト部の選手は、5月に行われた会見で部を辞めることを口にしていたが、10月に部の練習に復帰したようだ。

 「悪質タックル」ノミネートは、前を向いて進み始めている各選手や各チームのノイズになりかねない。当然、この事件は許されるものではなく、忘れてはないないが、このような催しで安易に取り扱うワードかどうかは疑問。むしろ「悪質タックル」に端を発する一連の騒動でもっとも問題視されたのは、日大上層部の不誠実さだった。「日大のひどい会見」のほうが適切ではないか。

 過去にも、2011年に「3.11」と「ラブ注入」が、2014年に「壁ドン」と「危険ドラッグ」が同時にトップテン入りするなど、「これらを流行語としてひとまとめにするのか」と思われるような言葉が、同列に扱われるケースは少なくなかった。

 同賞自体を否定する気はないが、誰かの不幸がきっかけで流行語になった背景のある言葉を「新語・流行語大賞」にノミネートすることが適切とは思えない。もちろん、「風化させない」という意味では、こういった“ショー”も必要なのかもしれないが、それならば「バラエティ部門」や「報道部門」というように、ジャンル分けをするなど配慮があってもいいのではないだろうか。

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