ここぞという時の男気とは?
真司は世に言う「イケメン」とはほど遠い。尚との身長差もほぼないし、お金もない。小説家だったのは過去の話で、今は見る影もない。安アパートに暮らして引っ越し屋のバイトで生計を立てているという、ないないづくしの男。しかも生い立ちまで暗く、神社の境内に捨てられたという天涯孤独の身の上なのだ。
そんな自分に引け目を感じて真司は悩む。自分は彼女に値する人間なのか? そして彼女を幸せにできるのだろうかと。これは男性にとっては非常に切実なテーマで、仲を深めるにあたり大きな壁となる。「好き」という感情だけでは大人の恋愛は上手くいかない。その辺りの複雑なモヤモヤした感情をムロは見事に演じている。尚の気持ちを信じきれない思い、戸惑い、コンプレックス。恋愛において必ずといっていいほど生じる葛藤だ。キラキラしたイケメン俳優にはこの役は務まらない。紆余曲折を乗り越え世に出てきたムロだからこその真実味がある。
尚の若年性アルツハイマーが発覚したことにより事態は急変、真司を諦めようと離れた尚だったが、不安に苛まれ助けを求めてしまう。「あなたが誰かもわからなくなるかもしれない」と話す尚を、「どんな病気でも俺は構わない。水虫でも歯周病でも」と優しく包み込む真司。不安だった尚の心はどれだけ救われただろうか。どんな時にも優しく受け止めてくれ、ここぞという時に男気を見せる。そんな男性を好きにならない女性がいるだろうか。ドラマを観ていた女性たちはこの瞬間、ムロに恋をしていたに違いない。
「清潔感、空間の占有度、口角、後ろ姿」の4つを備えたムロのフェロモン
『大恋愛』の脚本を担当する大石静は、ムロの印象を、「色気というものは引っ張っても出ないので、フェロモンを持って生まれてきた方だなと思います」と絶賛。なぜ今までムロが本格ラブストーリーの連続ドラマをやらなかったのかが不思議なくらいだと話している。「ラブストーリーの名手」と名高い大石静は、自身の作品に無名に近い俳優を起用し、その魅力を開花させることでも知られているが、ムロについては「清潔感、空間の占有度、口角、後ろ姿の4つが備わっている。だからいい」と太鼓判を押した。「この路線を発見した私たちのチームはすごいぞー!」と大きな自信を覗かせている。