罰を与えれば自動的に更生するか
犯罪者の更生を長く研究した臨床教育学者の故・岡本茂樹氏は生前、BLOGOSと日本財団が共同開催したイベントで、収監経験を持つ堀江貴文氏と対談。その模様は現在も「現代ビジネス」の記事として読むことができるが、岡本氏は刑務所が更生施設として機能していない理由をこのように語っていた。
<受刑者が一番目標にしていることは「早く外に出たい」。ですから、仮釈をもらうためには、上の者に逆らわず、言われたことに従うことをしているんです。(中略)そこに反省とか、本当に必要な人とつながって社会で働いていくとか、そういうものは全く欠落していくことになるわけですよね>
<刑務所は罰を与えるところとして機能していても、更生するというところでは、自分の気持ちを押し殺したり、人とつながれなかったり、人の顔色を見たり。そういう社会で人とつながって生きていくという側面を奪われています。そういう点では更生する場にはなっていないというのが、本当の実態だと僕は考えています>
現状の刑務所のシステムでは、受刑者に罪の反省を促し、人間性を育むことは難しいのかもしれない。普通に考えて、人間というものは、罰を与えられれば自動的に反省してより良い人間性を獲得できるものだろうか? 受刑者に厳しい罰を与えるだけではむしろ人間性を奪い、成長は見込めないだろう。「更生させる」という目的が蔑ろにされていないか疑問を感じてしまう。
出所時の所持金は10万円程度
再び『NEWSな2人』に戻ろう。刑務所内では日中、工場で作業をし、出所後の準備金として「作業報奨金」を貯えることができる。在籍期間が長くなれば時給が上がるものの、五十嵐さんは「1番最初の見習い工は1時間5円。3年で一等工になれるんですけど、そこで50円」と言い、出所時に手にする生活資金は微々たるものだ。
マキさんが出所時に受け取ったのは「5年4カ月の期間で10万円ほど」。わずか10万円だけを手に社会に出ることになった。「マンションやアパートを借りるとなると、50、60万円くらいのお金が必要になる。そのお金を出所した段階で持っている人間はほとんどいない」と話し、現在は生活保護を受給しながら生活しているそうだ。