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大阪・富田林署“逃走事件”容疑者の「能力の高さ」の秘密

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法社会学者・河合幹雄の「法“痴”国家ニッポン」

第3回 2018年9月、大阪・富田林署“逃走事件”容疑者の「能力の高さ」の秘密

 大阪府警富田林署の面会室から勾留中の樋田淳也(ひだ・じゅんや)容疑者(30)が逃走し、48日後の2018年9月29日に逮捕された事件。10月19日、大阪地検が加重逃走の罪で樋田容疑者を起訴して一応の決着を見たものの、逃走劇がメディアで連日大々的に報じられたこともあり、大阪府警には批判の電話が殺到。府警本部長は異例の謝罪会見にまで追い込まれました。

 樋田容疑者は逃走中、愛媛県庁の職員をはじめ多くの人々と接触し、高知県内の道の駅ではあろうことか警察官から職務質問を受けています。にもかかわらず、誰からも疑いの目を向けられることなく、実に1カ月半以上も逃げ続けた。なぜこれほど長期間の逃走を許してしまったのか、容疑者の人物像や逃走方法などから分析したいと思います。

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8月18日に大阪府警が公開した、「逃走被疑者樋田淳也」の似顔絵手配書

 まずは容疑者の人物像について。富田林署から遁走した際の手際のよさや、なかなか警察の網にかからない逃走の巧みさから、私は当初、これは“プロの犯罪者”かもしれない、という印象を抱きました。プロといっても、いわゆるわかりやすい“犯罪者”とはまた別の人種です。

 普通に暮らす大多数の市民にはなかなか信じがたいことでしょうが、犯罪を半ば生業とし、窃盗などを繰り返しながら生きている人間が、わが国にも少なからず存在します。彼らは、例えば窃盗においては、被害者も盗まれたことに気づきにくい程度のギリギリの金額だけ盗むなどの巧妙なやり方で、なかなか尻尾を出さず、市民社会からは不可視の存在。もし樋田容疑者がその類いなら、逃げおおせてしまうことも十分にあり得た。犯罪で生活していく以上、普段から協力してくれる仲間や逃走ルートを確保していて不思議はないからです。

 しかし、逃走中に助力を求めた知人によって逆に警察へ通報されたり、最終的に山口県周南市の道の駅で万引きGメンの手であっさり御用となったりしたところを見ると、どうやら私のその見込みは外れていたようです。

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 また、メディアで強調されていた「凶悪な強姦魔」というイメージも、実際の姿からはかけ離れている印象がある。確かに樋田容疑者は、逃走前に強制性交や強盗致傷などの重罪で逮捕・起訴されており、それ以前にも2度服役するなど、犯罪傾向が進んでいます。しかし、その手口を見ると、主目的は常に金品を盗むことにありました。今回の逃走劇においても、ひったくりや万引きを繰り返しはしましたが、重大というほどの犯行には及んでいません。

 つまり実像としては、凶悪犯というよりはコソ泥に近く、勾留中の富田林署でもそういう認識のもとに“軽く”扱われていた可能性がある。もし、樋田容疑者が本当にメディアで伝えられていたような凶悪犯なら、当然、富田林署でも要注意人物として厳しく監視され、もともと逃走する隙など与えられなかったでしょう。

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