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厚生労働省が今年発表した「平成30年版過労死等防止対策白書」によると、2017年度の精神障害に関わる労災請求件数は1732件で過去最多となった。この数値は年々上昇傾向にあり件数を減らすためには、企業がメンタルヘルスケアに高い意識を持って取り組むかが重要である。
それでは実際、企業のメンタルヘルスケアの意識はどうなっているのだろうか。株式会社あしたのチームは先月、会社経営者を対象に実施したメンタルヘルスケアに関するアンケート調査を発表した。まず、「労働契約法の安全配慮義務を知っているか」という設問に「名前も内容も知っている」と回答した経営者はわずか26.0%。「名前は知っているが、内容はよくわからない」(38.0%)、「知らない」(36.0%)と7割以上が明確に知らないことがわかった。
「安全配慮義務」とは、労働契約法第5条で定められた法律で、「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することが出来るよう、必要な配慮をするものとする」というもの。この結果を鑑みると、経営者のメンタルヘルスケアへの認識は相当低く、労災認定件数は今後もまだ増えるのではないか。
また、「自社で従業員のメンタルヘルスケアのために行っている取り組み」を聞くと、最多は「取り組んでいることはない」(72.0%)で、2番目に多い「定期的に個別面談や話をする機会を設けている」(18.0%)を大きく引き離す結果となった。メンタルヘルスケアに取り組んでいない理由を尋ねると、トップ3は「従業員の人数が少ないから」(66.7%)、「何から始めればいいかわからないから」(30.6%)、「対応方法がわからないから」(25.0%)だった。
メンタルヘルスケアは企業の義務
従業員数が少なくなるほど、メンタルヘルスケアを行う企業は少なくなる傾向があり、「平成30年版過労死等防止対策白書」によると、メンタルヘルスケアを行っている事業所は、従業員数が1000人以上なら100%だが、50~99人の事業所では85.2%、10~29人の事業所になると48.3%と半分以下まで落ち込んでしまう。
ただ、従業員数が少なくても、メンタルヘルスケアに取り組む中小企業は少なくない。産業医学振興財団が発表した「中小規模事業場におけるメンタルヘルス対策 事例集」では、そんな企業の取り組みが紹介されている。
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