ハイテク化する翻訳サービスの活用は?
英語教育への関心は高まる一方だが、将来的に、学習した英語力を発揮する機会は本当に増えていくのだろうか。
筑波大学准教授を務め、メディアでも活躍する落合陽一氏の著書『日本再興戦略』(幻冬舎)では、通話アプリ「LINE」の翻訳機能やグーグル翻訳などの翻訳サービスについて、「現時点で、自動翻訳は誤訳もありますが、それは、話し手に問題があるケースが大半です。(中略)よく機械翻訳をバカにする人がいますが、それは機械翻訳がバカなのではなく、話しているほうが対応できていないのです」との指摘がされている。現在展開されている翻訳サービスでも、使い方を誤らなければ、高いパフォーマンスを発揮してくれる可能性がすでにあるわけだ。
また、総務省は東京オリンピック・パラリンピックに向けて、日本語や英語、中国語など31言語間の翻訳が可能なスマートフォン用アプリ「ボイストラ」の導入を検討しているという。文部科学省は「東京オリンピック・パラリンピックが開催されるから英語教育を~」と言っていたわけだが、総務省はハイテク機器の導入で対応しようとしている。足並みが揃っているようには見えない展開だ。
さらに言えば、教員の負担の問題も大きい。義務教育としての英語教育を、教員に負担をかけてまで推し進めるべきかは疑問である。日本労働組合総連合会の調査では、小学校教員の平日1週間の労働時間は「60時間~65時間未満」(21.6%)、「65時間~70時間未満」(3.3%)、「70時間以上」(5.4%)と、約3割が過労死ラインの週60時間以上も働いている。英語教育が、小学校教員の労働時間をさらに伸ばしてしまわないか心配だ。
私達はどこか盲目的に「英語教育はこれからの時代必要」と言われれば、「それもそうだ」と受け入れてしまう。だが、これだけ英語をはじめ多言語の翻訳サービスが充実しており、さらに発展していくことが予想される今、「どれだけの英語教育が必要か」について考え直したほうがいいのではないだろうか。
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