印象的な“ベッドシーン”
どの時代でも、死の運命にみずから突進する清顕の転生者たちを、なんとか救おうと本多は奔走します。短くも鮮烈な生を全うする転生者たちは、人生の絶頂で人生を閉じますが、長田の脚本は、転生者同士の生を重ねることで、彼らの人生をより美しく、そして本多の悲しみをより深く描いています。
その最高潮が、清顕と聡子のベッドシーンでした。ふたりは舞台の両端に離れていて、真ん中にいるのは飯沼。飯沼が切腹して果てる瞬間、清顕と聡子はまごうことなくセックスをしていました。そして、彼らの背景に映っていたのは、日の丸。思うままに生きることへの強烈な追及が伝わる、とても印象的な場面でした。
物語の最後、晩年の本多が、聡子を訪ねますが、彼女は清顕のことを覚えていません。清顕は実在したのかどうか、原作通りの含みを残したままの結末ですが、笈田のまるまった背中からは、原作以上の謎と余韻が伝わってきたように思います。その謎に浸るために、原作を改めて手に取りたい。そう思わせる舞台が、名作と呼ばれるものです。