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Amazonがニューヨークにやって来る!〜サンクスギビングにみるアメリカの善と矛盾

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Thinkstock/Photo by bhofack2

 今年もまた感謝祭(サンクスギビング)がやってきた。毎年11月の第4木曜日と定められており、今年は22日だ。サンクスギビングの由来は、北米に入植したヨーロッパ人が寒い冬を越せずに苦しんでいたところをネイティヴ・アメリカンが食料を与えて救ったこと。この物語は子供たちも学校で必ず習うが、現在では家族親族が集まり、ターキー・ディナーを囲む日となっている。強いて言えば、日本のお正月やお盆のような雰囲気だ。

 したがって物語に関与しない奴隷の子孫であるアフリカン・アメリカンも、今では家族団欒の日として楽しむ。サンクスギビング前には大統領がホワイトハウスに七面鳥を招き、「君のことは食べません」と恩赦を与える恒例のユーモラスな儀式もある。オバマ大統領時代には娘のマリアとサーシャも同席し、オバマ大統領のつまらない “オヤジギャグ”(Dad joke)を娘たちが苦笑するのも恒例となっていた。2015年のジョークは「私にとってこれが7回目の七面鳥恩赦とは信じられません。時は飛ぶように過ぎるものです。七面鳥は飛べませんが」だった。

 ただし、ヒスパニックやアジア系など移民の場合、祖国からやってきたばかりの一世にとっては重要な祝日ではなく、アメリカ生まれの二世の子供たちは祝いたがるとういう傾向がある。

 さらに、助けたヨーロッパ人にのちに討伐され、居留区に押し込められたネイティヴ・アメリカンにとっては複雑な思いのある日であることも覚えておく必要がある。アメリカの歴史は、どの人種民族の視点で見るかによってことほど異なるものなのだ。

 いずれにせよ、サンクスギビングにターキー・ディナーが食べられないのは、元旦にお雑煮もおせち料理も食べられないことに匹敵する。筆者は渡米した最初の年はレジデンス(短期滞在の寮)に入居した。ビルの警備員の年配の黒人男性と仲良くなったのだが、サンクスギビングの前日に「どう過ごすのか?」と聞かれ、何も考えずに「別に」と答えると、男性はたちまち同情の顔つきとなった。「じゃあ、ターキーのおすそ分けを持ってくるから、それを食べなさい」と言うではないか。仕方なく、やはり渡米したばかりでサンクスギビングなど気にかけていない友人を誘い、レストランで食事をすることにしたという、今となっては良い思い出がある(あの警備員の男性は今も元気だろうか)。

貧者に配られる無料のターキー

 サンクスギビング・ディナーには決まった料理がある。メインはもちろん七面鳥の丸焼きだが、サイドディッシュとしてマッシュドポテト、インゲンマメ、クランベリーソース、パンプキンパイなどが付く。そこに各エスニック特有の料理も添えられる。アフリカン・アメリカン家庭であればマカロニ&チーズ、コーンブレッド、スウィートポテト・パイなど。イタリア系の家庭に招かれた時にはソーセージやチーズが大量に出され、パスタもあった。

 アメリカは豊かな先進大国ではあるが、貧困層も驚くほど多い。そこで、サンクスギビングの食材を買えない家庭に冷凍の七面鳥を含む食材一式を無料で配布するチャリティが全米各地でおこなわれる。低所得層への食料支援NPO、教会、地域出身のセレブなどが主催する。サンクスギビングの数日前にあまり豊かには見えない人々が長蛇の列を作っていれば、それはターキーの無料配布だ。

 だが、食材を受け取るのは貧しいながらも自宅があり、料理ができる人に限られる。全米に大量に存在するホームレスにはスープキッチンや教会の食堂などで調理済みのターキー・ディナーがふるまわれる。オバマ一家はシェルターなどに出向いて料理を配膳し、訪れた人々と会話を交わすことをサンクスギビング恒例行事としていた。アメリカのホリデー・シーズンのキーワードは「ハート・ウォーミング(心温まる)」なのである。

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