政治・社会

Amazonがニューヨークにやって来る!〜サンクスギビングにみるアメリカの善と矛盾

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増え続けるホームレス人口

 全米のホームレス人口は55万人(2017)と、日本の6,200人(2016)(*)に比べると格段に多い。アメリカの総人口が日本の2.5倍であることより、ホームレスの定義が日米で異なることが理由だ。日本では「都市公園、河川、道路、駅舎その他の施設を故なく起居の場所とし、日常生活を営んでいる者」と、路上生活者のみを指すが、アメリカは自身の住所を持たない、つまりシェルター入居者を含む。

(*)日本のホームレス人口について

 以下、筆者が住むニューヨーク市のホームレスについて書く。現在、ニューヨーク市には路上生活者が数千人、シェルター入居者は63,000人と、史上最悪の記録を更新中だ。路上生活者の人数は推定だが、シェルター入居者は正確にカウントされている。以下はその内訳だ。

・家族ホームレス:48,000人(うち子供:22,900人)
・単身者ホームレス – 男性:13,000人
・単身者ホームレス – 女性:4,500人

 家族ホームレスには成人のみの家族もあれば、成人と子供の組み合わせもあるが、現在、市内で22,900人もの子供がホームレスなのである。

 家族ホームレスとなる理由は様々だが、親が低学歴、かつ1人親の場合はホームレスになりやすい。そもそも低賃金の仕事に就いており、貯蓄がない。なんらかの理由で職を失うと再就職が難しく、蓄えもないため、すぐに困窮する。また、自身が低所得の場合、家族親戚も低所得であることが多く、経済的な支援を頼めない。やがて家賃を滞納してアパートを退去させられる。するとホームレスシェルターしか行き場がない。いったんシェルターに入ると、ニューヨークは賃貸物件の家賃が非常に高く、かつ空室率が極端に低いことから入居できるアパートを見つけるのが至難の技となり、シェルターに長期滞在となりやすい。

 ホームレス人口が増え続けていることから、市内あちこちにあるシェルターも定員に達してしまっており、必ずしも元の自宅付近のシェルターには入れない。すると子供は遠く離れた地区にあるシェルターから長距離通学するか、もしくはシェルター付近の学校に転校することとなる。どちらの場合もクラスメートにホームレスと知られるのは辛く、精神的にも学力的にも落ち込んでしまう。今はほぼ、どの公立学校にもホームレスの児童生徒がおり、学校側も子供の転出・転入・欠席の対応が大変だ。また、着替えを持たない子供のために古着を用意している学校すらある。華やかな面が語られることの多いニューヨークの、これが実態なのである。

 そんな子供たちも含めて、なんとか全員がサンクスギビングにターキー・ディナーを食べられるようにと多くの人々が努力する。だが、サンクスギビングが終われば、1カ月後にはクリスマスだ。全米がホリデー・シーズンで朗らかに盛り上がる最中、ホームレスの子供たちは「今年はプレゼントをもらえるのだろうか」と思い悩む。したがって、ホリデー・ギフトを寄付するチャリティも盛んに行われる。

 これがアメリカの「善」の部分だ。

ニューヨークにやってくるAmazonの地域貢献

 先週、Amazonが本社を2つに分け、ひとつはニューヨーク市クイーンズ区にやってくることが報じられた。地元住民、特に貧しい人々は自分たちが置き去りにされたまま、Amazon本社周辺のみ再開発がなされて同社勤務の高所得社員が流入し、格差がますます広がることを恐れている。

 とくに問題となるのは、同地区にある全米最大の低所得者用公団住宅だろう。著名なラッパーNasの出身地として知られるが、ニューヨークタイムズは同公団に現在は6,000人が暮らし、入居者の年収中央値は16,000ドル(約180万円)と報じている。加えて治安の問題も抱えている。この公団が対象となるかは不明だが、Amazon CEOのジェフ・ベゾスはこれまでと同様に、なんらかの地元貢献をするものと思われている。アメリカの大企業にとって寄付や地域貢献は単なる善行ではなく、地元からの反発を防ぎ、同時に社の社会的評価を高めるビジネス上の必須行為でもあるのだ。

 一般市民の善行。企業のチャリティ。いずれもアメリカには欠かせないものだが、本来はすべての人が寄付を受け取らずに、当たり前に暮らせる社会であるべきだ。だれもが自宅でターキーを買うことが出来、子供たちはなんの不安も抱かずにクリスマス・プレゼントはもらえるものだという前提で、「何をお願いするか」にのみ、頭を悩ませるべきなのだ。

 筆者自身もAmazonを始め、大企業が提供するサービスや商品に囲まれて暮らしている。そうした大企業がアメリカの国力を担っている。だが、大企業が一般人の想像すら超える天文学的な額の富を蓄えられる仕組みがあるからこそ、そこから漏れてしまった人々はホームレスになり、ターキーやクリスマス・プレゼントすら買えない生活を送っている。

 これがアメリカの「矛盾」なのである。

●以下はニューヨーク市のホームレス支援団体 Coalition for the Homeless による、ホームレスの子供へのホリデー・ギフト注文サイト。Amazonと提携しており、団体側が希望するオモチャがリストアップされている。寄付をしたい場合、オモチャを選んでカートに入れると配送先に「Holiday Party」と出てくるので、それを選ぶだけ。英語表記だが、篤志のある人はぜひどうぞ。https://www.amazon.com/hz/wishlist/ls/13EYYDRSNM5C9?&sort=default

(堂本かおる)

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