「それ、本当に売れると思ってやってますか?」
あと、こういうことを僕が言っていいのかわからないけど、今回の事件の報道を見て、「あんな活動やってたって、絶対売れるわけねーじゃん」っていうような内容の仕事を、アイドルたちに一生懸命やらせてるという、そのことにもすごく驚きましたね。「農業アイドル」ということでスーパーで即売会だとか、野菜を売るとかしていたみたいですけど……。周りにいた大人たちは、本当に“売れる”と思ってそれをやらせていたんでしょうか? ちゃんと戦略を練って、「いつかメジャーアイドルになりたい」という少女たちの夢や希望に見合った活動をさせてあげていたんでしょうか? 小さいとはいえそれなりに歴史も規模もある東京の芸能プロで働いている自分としては、どうしてもそういうことを思ってしまうんです。
それを考えると、たとえば女性アイドルでいうと、今年で20周年を迎えたハロー!プロジェクトって、やっぱりすごいなって思いますね。結果としていろんな問題を起こした子もいるけど、「研修生」からの育成システムがきちんと確立されているし、そして何より、つんくさんというカリスマ的な“プロデューサー”が、今は退いたとはいえ巨大な存在として控えていることの意味は、やっぱり大きいと思うんですよね。そういう人格的にも素晴らしい“師”がいて、それを見て女の子たちも自覚的に育つというか。秋元康さんみたいに、現場の子に手を出したりもしてないしね(笑)。
まあとにかく世間の「地下アイドル」と呼ばれているタレントさんたちの活動を見ていると、運営している人たちの“志”がどこにあるのかよくわからない……という場合が多いなあというのが、僕の正直な印象です。
それこそ、wezzy編集部のある渋谷にも、ヨレヨレのスーツを着て、たいしてかわいくもない(失礼!)女の子たちを引き連れて、小さなライブハウスのあるエリアまで道玄坂を上っていくギョーカイ崩れのおじさんをよく見かけるじゃないですか。ああいう風景を見ていると、「その子が本当に売れると思って、自信を持ってやっているの? ほかのアイドルと差別化してどう売っていくのか、ちゃんと考えてるの?」なんて問いただしたくなりますよね、どうしても。
今年で活動15周年を迎えた新潟のご当地アイドル「Negicco」や、今年解散してしまいましたけど11年の活動を続けた「バニラビーンズ」など、大ブレークに至らないまでも長く活動を続けていくようなスタイルのアイドルたちももちろんいますけどね。
でも、その子たちの大事な大事な一度きりの人生なんだから、絵空事の夢を見せてただ消費させるだけじゃなく、見込みがないなら見込みがないで、きちんと諦めさせてあげるというのも、僕ら芸能マネージャーの重要な仕事だと思っていますけどね。
(構成/白井月子)
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