移民政策が、経済的・社会的・人道的にかなりヤバい理由 

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移民の受け入れ条件が緩くなる

 厚生労働省の発表によると、日本には2017年10月末時点で128万人の外国人労働者がいる。この時点で過去最多となっており、しかもこれで移民流入者は世界第4位に上昇したことになるという。

 これまで、日本で外国人の就労が認められていたのは、高度専門的な能力を有する職種で、たとえば外交官、大学の教授、医師などだった。

 今回の入管法改正では、これまで認められていた高度な専門性をもつ職種の条件を「特定技能2種」に分類し、新たに「特定技能1種」を設けた。

 これが巷で人材不足となっている現場のための条件で、「相当程度の知識または経験を必要とする技能」と定義されている。要は、これまで制限されていた建設業や農業、介護など14業種での受け入れがOKになるよ、ということらしい。

 「特定技能2種」に該当する外国人は家族の帯同もOKで、在留期間は無制限だ。つまり、簡単に10年の滞在を満たして永住権が取得できる。

 一方、新たに設けた「特定技能1種」では家族の帯同は認められず、滞在期間も5年が限度になる。ところがこの「特定技能1種」の外国人は、「熟練した技能がある」と判断されれば「特定技能2種」にアップグレードできる。

 すると、いきなり家族帯同もOKになり、滞在期間も無制限になり、永住権も取得できるようになる。つまり、一度入った外国人は、なし崩し的に永住化することが容易に予想できる。

移民ウェルカムな人の刹那的な損得勘定

 このように、移民が劇的に増加することが予想されるが、「仕方がない」といったムードもある。

 日本の労働力不足は深刻だ。経済界は労働力確保のために移民受け入れを要請し続けてきた。

しかし、健全な資本主義の発展という理屈から言えば、人手不足に対する企業側の対応は以下のどちらか、あるいは両方になる。

●報酬(給料)を上げて人材確保に努める。

●設備投資などにより、生産性を高める。

 実際、1950〜60年代の日本は、人手不足を移民に頼らず、給料の引き上げと設備投資による生産性向上で対応し、高度経済成長を果たした。

 ところがデフレマインドにどっぷりと浸かった企業家たちは、上記の方向に向かわなかった。

 「(人手不足の)補強のためには移民しかない」と、経団連の米倉弘昌会長(当時)は、早くも2010年11月8日の定例会見で語った。経済界のトップがこの有様だ。彼らの本音は、「賃金を上げてまで日本人は使いたくないし、設備投資ももったいないから、移民を受け入れようよ」というものだ。

経済的に移民はどのような位置づけか

 移民は経済にどんな影響を及ぼすのだろうか。 

 まず、移民を入れると、短期的には企業にとって安価な労働力が補填されるため、利益を下げずに、かつ投資も行わずに売上を維持もしくは伸ばすことができる。これは短期的には経済的なメリットとなる。

 ところが、移民を受け入れれば当然、労働市場における競争原理が働き、賃金の下降圧力が加わる。その結果、企業が儲けているわりには賃金が上がらず(もしくは低下し)、日本人労働者は豊かにならない。

したがって、内需が拡大せず、巡り巡って企業の業績に悪影響をもたらすのだ。

 「デイリー新潮」や「日刊ゲンダイ」が報じた一橋大学経済研究所所長の小塩隆士教授の試算がある。

 これは1990年5月に、同教授が経済企画庁(当時)に編集協力していた広報誌『ESP : economy, society, policy 6月(297)』に寄稿した『外国人労働者問題の理論分析』という論文に記載されていた。

 そこでは、外国人単純労働者を100万人受け入れると賃金が24.24%下がるという衝撃的な数値が出されている。このシミュレーションに対し、デイリー新潮では経済アナリストの森永卓郎氏が次のようにコメントしている。

 “雇用する側にはメリットですが、働く側には大きなデメリット。特に下がるのは、パート、アルバイトの賃金です。”(デイリー新潮:2018/10/25)

 また日刊ゲンダイでは、経済評論家の斎藤満氏が次のようにコメントしている。

 “論文自体は古いものですが、問題は現在でも変わらず、外国人労働者が流入することで賃金が下がる可能性は高いです”(日刊現代:2018/11/4)

 次に、行政コストの増大が国民にのしかかってくる。移民は収入が少ないため税負担も小さくなるが、日本語の教育などのコストは増加する。それを負担するのは国民の税金だ。

 同時に、社会保障コストも増加する。移民が長期滞在しやすくなることで、年金を支給する必要も生じるだろうからだ。また、どこかの段階で労働力がだぶつくようになれば、当然移民は失業する。そうなると、やはり社会保障にぶら下がることになる。これもまた、国民が負担しなければならない。

 そして何より、人口減少という経済成長のチャンスをみすみす潰してしまうことになるのだ。

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