政府推奨のリカレント教育、呼びかけにのる企業はどれほどあるか

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Thinkstock/Photo by Jacob Ammentorp Lund

 経済産業省は月末の金曜日に早期退社を促す「プレミアムフライデー」を活用して、社会人が大学で学び直しや異業種交流に参加するための機会を作る「プレ金大学」を企画した。

 早稲田大学では今月30日、日本橋の特色を歴史から学ぶ講義が開催される。現在、早稲田大学を始め、東京芸術大学や常葉大学など9大学と連携し、講義や交流会を展開していくという。

 政府は今年6月に発表した「人づくり革命基本構想」で、<リカレント教育の受講が職業能力の向上を通じ、キャリアアップ・キャリアチェンジにつながる社会をつくっていかなければならない>と記載した。

 政府は社会人の学び直しを意味する「リカレント教育」を推奨しており、厚生労働省は語学やパソコン技能の習得などの教育訓練受講に支払った費用の一部を支給する「教育訓練給付制度」の補助率を、現行の2割から来年から4割に拡大する方針を掲揚。財務省は「平成30年度税制改正」で、<リカレント教育等人材投資を増加した企業に対しては、税額控除率を上乗せします>と記すなど、本格的に環境整備を進めている。

リカレント教育は生活を豊かにするのか?

 リカレント教育への関心は高まっている。エン・ジャパン株式会社運営する転職サイト『ミドルの転職』上で、35歳のサイト利用者を対象に実施したアンケート調査によると、90%が「今後リカレント教育を受けたい」と回答した。その理由を聞くと、「今後の人生を有意義にするため」(67%)、「教養を深めるため」(51%)、「就職や転職のために必要性を感じたため」(51%)と続いた。人生をより豊かなものにするため、リカレント教育を受けることに前向きな姿勢を見せる人は多い。

 内閣府の「平成30年度 年次経済財政報告」では、リカレント教育など学び直しを“自己啓発”というワードで括り、それらを行なった人とそうでない人の1~3年後の仕事状況の変化を比較した調査結果を紹介している。

<自己啓発を実施した人と実施しなかった人の年収変化の差額は、1年後には有意な差はみられないが、2年後では約10万円、3年後では約16万円でそれぞれ有意な差がみられている。自己啓発の効果はすぐには年収には現れないが、ある程度のラグを伴いつつ効果が現れると考えられる>

<非就業者が自己啓発を実施すると、就職できる確率 が、10〜14%ポイント程度増加することが示唆されている。年収の場合と異なり1年後から有意な関係がみられることから、現在労働市場に参加していない人は、自己啓発を行うことで就職できる確率をすぐにでも高めることができると考えられる>

 これを受けて、自己啓発は年収を10万円以上、就職率を10%以上アップさせてくれる……と、そこまで単純明快かつポジティブに捉えていいものなのだろうか。就業者の自己啓発に対する1カ月のコストは、「18時間・1.6万円程度」、非就業者では「31時間・1.8万円程度」と、コストパフォーマンス面でも疑問が残る。教養を深めたり、異業種交流を楽しんだりなどの効用を加味すれば、元は取れるのかもしれないが……。

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