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東京都が体罰禁止の方針を固める 親のプライベートを確保することも体罰抑制に効果的

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 東京都は19日、東京都庁で開かれた児童福祉審議会で、保護者が子供への体罰を禁止することを独自の条例案に盛り込む方針を固めた。公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンの報告書では、体罰を法規制することは体罰の抑制につながると記している。

 <罰等を法律で禁止することと啓発活動の効果を比較すると、法改正も啓発も行っている場合(例えば、スウェーデン)が体罰および虐待を減少させる効果が最も高いことが指摘されている。次いで、法改正をしたが啓発はそれほど行っていない場合(例えば、ドイツ、オーストリア)、法律による禁止はしていないが啓発を行った場合(例えば、法改正前のスペイン)となった>

  地方自治体が「躾であっても体罰は禁止」と掲げることは非常に価値のあることだ。この流れが各地方自治体から全国に、最終的には厳格に法律で定められてほしい。

  また、同法人が子育て中の親や養育者1030人を対象に実施した「体罰」に関する調査によると、しつけのために子供を体罰することに、「積極的にすべきである」(1.2%)、「必要に応じてすべきである」(16.3%)、「他に手段がないと思ったときのみすべきである」(39.3%)と回答。半数以上の親や養育者が体罰を容認していることがわかった。

 体罰は子供の脳に深刻なダメージを与えると言われている。児童虐待に関する研究をしている福井大学教授の友田明美氏が、アメリカのハーバード大学で18~25歳の男女約1500人を対象に行った研究によると、子供時代に体罰を経験した人はそうでない人と比べて、感情や思考をコントロールする脳の「前頭前野」の容積が萎縮していたという。

 友田明美氏は東京新聞内の記事で、前頭前野が萎縮してしまうことの問題点を以下のように指摘している。

 <前頭前野は、萎縮することで危険や恐怖を常に感じやすくなる。感情をコントロールするため犯罪抑止力にも関わる部位で、正常に発達しないと問題行動を起こしやすく、うつ病に似た症状も出やすい>

 体罰を受けた子供は、犯罪リスクやうつ病リスクが高まってしまう可能性がある。体罰は子供の健全な社会生活を阻むのだ。半数以上の親や養育者が体罰を容認してしまっている現状を考えると、事態は深刻だ。しかし一方で、家庭というきわめてプライベートな領域に第三者がどこまで踏み込むのか……という問題もつきまとう。

親のプライベートの充実が体罰を減らす

 そこではたらきかけたいのが、「体罰禁止」と呼びかけるだけでなく、どうすれば体罰をせずに子育てできるか提案していくことだ。明確に体罰の禁止を掲揚することも大切だが、親や養育者が体罰をしてしまう状況を改善することも必須である。

 セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンの調査では、「子供の言動に日常的にイライラする人」は、子供を叩くことが「日常的にあった」(1.9%)、「時々あった」(37.0%)、「1~2回あった」(22.3%)と9割近く体罰を行っており、「叩くことは全くなかった」はわずか10.8%に留まった。

 一方、「子供の言動に全くイライラしたことがない」と答えた人のうちでは、62.8%が「叩くことは全くなかった」と回答した。親や養育者がストレスフルな心境であればあるほど、体罰は生じやすいと言える。親や養育者の適度なガス抜きは絶対に必要だ。

 株式会社オウチーノの調査では、「育児ストレスの対処法はなにか」という設問で、女性は「睡眠をとる」(29.8%)が最多。以降、「ママ友と話す・相談する」(24.5%)、「おいしいものを食べる」(23.3%)、「一人の時間を作る」(22.7%)と続いた。男性は「夫婦でコミュニケーションをとる」(32.7%)、「睡眠をとる」(22.9%)、「一人の時間を作る」(18.5%)などが票を集めた。

 つまり、親や養育者のプライベートな時間を充実させることが、育児ストレスを軽減させ、ひいては体罰減少につながると考えられる。「子育て中にプライベートの時間なんて非常識だ」といった意見も未だにありはするが、それこそ外野の余計な声でしかない。株式会社キッズラインの調査では、「週に1回、3時間自分だけの時間があるとすると、今感じているストレス度合いは減るか」と聞くと、83.6%が「減る」と回答した。わずか数時間でも自分の時間があるだけで、ストレスを軽減させることは可能だ。逆に言えば、多くの保護者が週に3時間の自由時間さえ持てないということだろうが、それでストレスなく生活することのほうが困難だろう。

 ツイッター上で、母親が育児を一旦止めてリラックスする「#ママ閉店」という言葉が一時期話題になったが、「#ママ閉店」に対して、「ネグレクトだ」「閉店するなら開業するな」など批判の声が相次いだことは記憶に新しい。そうした外野の声こそが結果的に被害を招きかねないことを自覚してほしい。子供のためを思うなら、親のプライベートを尊重することは重要なことだ。

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